到達不能基数 Inaccessible Cardinal


|| 到達不能(?)

これの説明は「理がある範囲全体のサイズ」とか。

要は『数学で議論できる領域』みたいなものです。

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目次


連続体濃度「自然数の冪集合である実数の濃度」

連続体仮説「自然数と実数の間に濃度がないという仮説」



・到達不能基数の由来「下地と操作の保証のみで作れる限界」



弱到達不能基数「正則で非可算なことだけが条件の極限基数」

強到達不能基数「弱到達不能に冪集合の条件を加えた極限基数」








これは実際どんなもんか見た方が分かりやすいでしょう。

まあ、なんとなく「とにかくめちゃくちゃでかい大きさ」とか、

そんな風に思っておけば、大体あってます。




んじゃ詳しく見ていきましょうか。

必要な補助知識は『カントールの定理』と『冪集合』です。



必須となる知識は『順序数』と『基数

そして『極限基数』についてです。

これらを元に厳密に定められてるので、知っておいた方が。




字面で察している方もいるかもしれません。

要は、大きくするという操作に限界が来ると、そういう話です。

「到達不能」の所以はそんな感じになります。







連続体濃度 Continuum


|| 連続してるものの濃度

これは、一言で言えば『実数の濃度』のことです。

形式的には『 |N|<|2^N|=|R| 』になります。




|N|<|2^N| 」は『カントールの定理』によって与えられます。




これを「 \aleph_2 」や「 \mathfrak{c} 」と書いて、『連続体濃度』とか言ったり。

ちなみに『 \aleph_1 』としないのは、

その間にあるかもしれないから、という理由になります。




これが「実数」の濃度と一致することは、

『ベルンシュタインの定理』などから確認できます。

この辺長くなるので別の記事でやります。




ともかく、こんな感じに「でかいサイズ」があるわけです。

たぶん直観が働くのはこの辺りまでになります。






連続体仮説 Continuum Hypothesis


|| 間にある濃度についての仮説

↑の『 \aleph_0<\aleph_1<\mathfrak{c} 』の『 \aleph_1 がない』っていう仮説です。

要は「 \aleph_0 」の次の最小の濃度は連続体濃度だって言ってます。




仮説なのは、分からんからですね。

あることも無いことも証明できません。




仮に存在すると仮定するなら、

やはり「操作の追加」が必須になるでしょう。



「集合」の濃度が確実に大きくなる集合が作れて、

「冪集合」の濃度より確実に小さいものが作れる。



こんなあるともしれない操作を公理として与えれば、

確実に↑のような「 \aleph_1 」が存在します。

まあ、考えてもしょうがないんですけど。




ともあれ、これが「 ZFC 」と独立だとは分かってます。

あるとしてもないとしても、特に矛盾は出てきません。

いわゆるお好みというやつです。






一般連続体仮説 GCH


↑のは確認のしようがないんで、あんま使えません。

しかし「カントールの定理」を使う場合は確認が可能です。




そんなわけで、それ以外を採用しないことにした「公理」。

それを指して『一般連続体仮説』と言ったりします。



使えないやつをお払い箱にして排除した感じの「公理」です。

「公理」なんで、どっちにしろこれも証明・反証ができません。




これを採用するときは『 ZFC+GCH 』みたいに書かれます。

でかい濃度と「選択公理」を使う場合は基本的に付ける感じ。




「到達不能基数」は、これらを内包したドデカい大きさになります。

この議論領域は「グロタンディーク宇宙」とか言われますね。







冪集合と ω_n


『カントールの定理』から「基数」には次の関係が成立します。



card(ω)<card(2^ω)




つまり、こうやれば確実にでかいサイズを作れるわけです。

でっかいものを作ろうと思うだけなら、けっこう単純な感じ。




そんなわけで、『順序数による割り当て』で、

本題になる「基数を定義して」見てみましょう。



まずは『 ω_0<2^{ω_0} 』として『 2^{ω_0}=ω_1 』としてみましょうか。




「冪集合」の定義から『 ω_0∈ω_1 』は明らかです。

ですから「 ω_0<ω_1 」として問題ありませんね。




そんで、これを「次の最小の濃度」と定義します。

これがいわゆる↑の「一般連続体仮説」です。



なんか問題ありそうな気がしますけど、

証明も反証も無理なので気にせず行きましょう。






そんな調子で、でかい数を作ってみます。


ω_1<2^{ω_1}=ω_2=2^{2^{ω_0}}


ω_2<2^{ω_2}=ω_3=2^{2^{2^{ω_0}}}



ω_n<2^{ω_n}=ω_{n+1}=2^{2^{2^{…2^{ω_0}}}}




ω_2 」辺りで直観の範囲じゃないです。

でも「冪集合」のおかげで「 ω_2<ω_3 」は確か。

保証されてるのはこれだけですが、さてさて。




これは延々と続いていくようですが、

いや、実際延々と続いてるんですけど、限界が来ます。

その限界というのは「 ω_n<ω_{ω_0} 」です。




ω_2 」くらいからすでに意味不明なわけですが、

これは輪をかけて意味不明な大きさになります。



ちょっと何言ってるかほんと分かんないです。

具体的なものは恐らく現実に存在し得ません。



考えるとしても、ほんと無理矢理に考えるしかないです。

直観的には理解し難いかと。



例えば、宇宙にある全てで新しく無限に宇宙を作って、

そのやり方を無限回繰り返して、

更にそのやり方を無限に繰り返して、を無限に繰り返して、

そんな操作を更に無限回繰り返して、

というのを無限回繰り返して得たもの、という感じ。



もはやどんなものができたのかさっぱりです。

果たして、そもそもそんなものがあるのかすら微妙という始末。




そんな感じで、これ以上の大きさのものはこの操作から得られません。

なぜなら操作が「有限」回しかできない以上、

それ以上の大きさを理解することはできないからです。




要するに「冪集合の操作が加えられた回数」が分からなくなるから、

「ちゃんと比較する」ことができなくなる、という感じ。



なにせ「操作」を加えたことが分からないと、

「ちゃんと大きいのか」がはっきりしなくなってしまうので。




つまり、これより上の大きさに「理」はありません。

「理」が見出せる範囲は『 ω_n 』までとなります。

つまり『 ω_{ω_0} 』の大きさには「理」が届かないわけです。




そう、人間の理が届かず、数学的に触れられない。

つまりその大きさには「到達できない」というわけですね。

はい、というわけで、これが『到達不能』の由来になります。







弱到達不能基数 Weakly Inaccessible


|| 弱いっていうか広い?到達不能な大きさ

ざっと言うと『正則で非可算な極限基数』のことです。

これだけ見ると、は?って感じしますね。



『正則な極限基数 \aleph_α=ω_α 』の条件は「 \mathrm{cf}(ω_α)=ω_α 」です。

また『非可算基数 \aleph 』の条件は「 \aleph_0<\aleph 」です。




ここに限らず、弱いということは「広い」という意味でもあります。

要は『抽象的』で、意味が広すぎて実用性が低い感じですね。

なので、基本的にこちらはあまり使われません。




「到達不能基数」というと、だいたい↓のことです。

↓の方が条件が強いので、自動的にこっちも含みます。






強到達不能基数 Strongly Inaccessible


|| 字面がなんか超強い

「弱到達不能基数」に条件を追加した「到達不能基数」です。

要は意味不明な大きさのことですね。




追加した条件は↓です。

ここで『正則な非可算極限基数』を「 κ 」とします。



∀\aleph<κ\,[\,2^{\aleph}<κ\,]






非可算性を要求しないときもあるようです。

この場合『最小の濃度 \aleph_0 』もまた「強到達不能基数」になります。




ここで重要なのは「冪集合」を用いている点になります。

これを条件にしてるので、なんとかサイズが測れるわけですね。

まあ、それでもほんとよく分からん大きさなんですけど。