|| なんかの中身を別のやつにするやつ
基本的な知識は『集合論』のページに載っています。
そこの『写像』の項目を読んだ上で見ることをおすすめします。
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目次
・代表元「単に、写像で写る元のこと」
・写像「感覚的にはフィルターみたいなやつ」
単射「要素が一対一で繋がってる写り方」
全射「被ってでも全部が写る写り方」
全単射「被りもなく要素が一対一で繋がってる写り方」
逆写像「写像と像から得られる逆の処理」
部分写像「部分的に写らせる写り方」
恒等写像「自分自身に写る写り方」
合成写像「写った後にまた写るような写り方」
基本的な知識を、とりあえずさらっとまとめます。
・写像「集合 S と集合 T の間にあるフィルターみたいなもの」
・関係「集合内での、元(要素)の対応」
・始域・定義域「 → の左のやつ」
・値域(像・終域)「 → の右のやつ」
・逆像「像と写像から得られる、始域の部分集合」
代表元 Representative
|| 写る元のこと
要は「定義域にある元」のことですね。
『集合論』では省きましたが、
「写像」を定義する方法がもう一個あります。
ちょっとややこしいんで、基本のところからは省きました。
ここでは「代表元」とかいう単語が出てきます。
というかこれ、ここくらいでしか見ません。
その「代表元」を使った定義の仕方は↓みたいな感じ。
f:a(∈A)↦b(∈B)
「 a 」が「代表元」で、
「 b 」が「像」もしくは「値」と言います。
さて、以上を踏まえて、
「写像」についてもっと詳しく見ていきます。
まずは「写り方」(元がどこにどう移動するか)から。
写像 Mapping
|| あるものを、あるものにするなにか
「フィルター」と一口に言っても、いろいろありますよね。
ちょっと多すぎて困るくらいにはたくさん。
例えば吹き抜けのものでも、それは「フィルター」と言えるでしょう。
対称的に、なにも通さないものでも「フィルター」と言えます。
更に言えば、ランダムに、出鱈目に写すものでもそうでしょう。
「関数」は、この一部です。
というより「関数」の一般化の結果がこれですね。
違いは単純で、
「関数」は「一つの元(要素)」しか出力しませんが、
「写像」は「複数の元(要素)」を出力できます。
(全射と逆写像とか)
こんな具合ですから、どうにかこうにか分類する必要があります。
用途から創られたのだとしても、それを一々説明するのは面倒です。
なので、分類をします。
分かり易く、まず「 2 」つに分類しましょうか。
その区分は「意味のあるもの」と「意味のないもの」です。
といってもまあ、これだけじゃまだよく分からんですよね。
ともかく、まずは「意味の無いもの」は除外しましょう。
そして「意味がある」を「特定の性質を持つ」と言い換えましょうか。
すると大きく分けて、
「 6 」つのものが考えられます。(調べた結果)
その内「 3 」つが、
「単射」と「全射」と「全単射」です。
残り「 3 」つは、
「逆写像」と「恒等写像」と「部分写像」になります。
というわけでさっそく、これらを詳しく見ていきましょう。
単射 Injection, Injective Function
|| 一個一個が紐づいてる感じ
「単写」やら「一対一の写像」って言われます。
やってることとしては「一対一の写像」が良い表現ですね。
「元・要素」が「一つずつ対応する写像」を『単射』と言います。
「 \mathrm{One\,to\,One\,Mapping} 」とも、
形式的には、量化記号を使って↓みたいに表されます。
∀e_1,e_2∈S\,[(e_1≠e_2)⇒(f(e_1)≠f(e_2))]
意訳は「違う元(要素)なら、必ず違う結果(像)を得る(全部が)」
具体例
例えの為に、二つの集合を用意します。
「 A=\{1,2\} 」「 B=\{2,4,8\} 」
これに、適当な対応をつけてみます。↓
1\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,2
2\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,4
\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,8
↑これは「単射」の条件を満たす一例です。
きちんと「全ての違うもの」は「違うもの」に写っています。
全射 Surjection, Onto Function
|| とりあえず全部写る感じ
これは字面に近い意味で、そのまま「全部写る」という感じ。
なので「定義域」から「終域の全て」に写ります。
「 \mathrm{ Onto\,Mapping } 」とも。
形式的には↓みたいな。
∀b∈B,∃a∈A\,[\,f(a)=b\,]
意訳は「 b になる(写される) a が必ずある」
具体例
適当に集合を用意しましょう。
「 A=\{1,2,3\} 」と「 B=\{3,6\} 」とか。
1\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,3
2\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,6
3\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,6
「全射」だと、こういう感じになります。
被っててもお構いなしです。定義域は全部写ります。
全単射 Bijection, Bijective Function
|| 一つ一つが全部写る感じ
見て分かる通り「全て」右のやつに「被りなく」写すやつです。
厳密には全く違いますが、感覚的には「 = 」みたいな感じ。
「一対一対応」などと呼ばれます。
感覚的にはこれが分かり易いです。(単射と混同しそうですが)
「 \mathrm{ One\,to\,One\,Onto\,Mapping } 」とも。
形式的には、
「全射であり」かつ「単射である」『写像』のことです。
∀b∈B,∃_1a∈A\,[\,f(a)=b\,]
視覚的に簡単にしたかったので、↓を使ってます。
「唯一存在記号 ∃!,∃_1 」(一つだけある)
具体例
集合「 A=\{1,2,3\} 」と「 B=\{5,6,7\} 」で。
1\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,5
2\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,6
3\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,7
これが「全単射」の簡単な例になります。
見て分かる通り、基本的に『要素数が同じ』になります。
「濃度」の定義とかでこの辺は詳しく。
余談
なんとなく分かると思いますが、
人間が感じる「同じ」という感覚は「全単射」が近いです。
厳密には「ほとんど被らない単射」なんかもそうですね。
イコールなんかは、ほんとはまるで実用性は無いんです。
人が感じる「同じ」は、ほぼ全て『類似』に過ぎません。
いわゆる「共通点の単射」が『多く感じられる』から、
人は「同じだと感じる」わけです。
この辺り、理解していただけると幸いです。
そういう理由かはさておき、使用頻度で並べると、
『 \mathrm{ one\,to\,one\,onto }\,>\, \mathrm{ one\,to\,one }\,>>\, \mathrm{ onto } 』となります。
逆写像 Inverse Mapping
|| 像から、定義域へ
要は「逆関数」みたいなものです。
というかまあ、「逆関数」の親ですね。
「写像」と「像」によって決まります。
単一で定義されるものではありません。
主に「写像」の「合成」で扱うものになります。
上記の通り「写像」が決まった後に決まるので、
単体での活躍は基本的にしませんね。
形式は↓
[\,f(x)=y\,]⇔[\,f^{-1}(y)=x\,]
であるなら『 f^{-1} 』が「逆写像」
「 y 」は「像」
基本的には「写像の逆の操作」って覚えとけば。
自分はこんな感じで覚えて、これから定義を思い出す感じ。
部分写像 Partial Mapping
|| 写像の一部を切り抜いたやつ
「写像」が「全部写す」なら、これは「一部写す」ものです。
そんな性質持ちですから「写像」を一般化したものになります。
基本的には、↑の「逆写像」が出てくると出てきます。
というのも「単射」の「逆写像」では、
「終域の全体」を使うことはありません。
(全単射じゃないなら)
こんなときに、この「部分写像」を考えなければならないわけです。
この「逆写像」が出てきたらどうの、という部分だけは覚えましょう。
これを考えるとき、
ただの「写像」は「全域写像」と呼ばれるようになります。
といってもまあ、あんまり使う単語じゃないです。
覚えておくべきではありますが。
恒等写像 Identity Function
|| 自分から自分に写る感じ
字面の通り「そのまま」の写し方をする「写像」です。
掛け算なら「 × 1 」で足し算なら「 +0 」みたいな。
ほんとそのままです。なんの変化も与えません。
これは割と制約が厳しめの概念です。
というのも、まずこれは「全単射」です。
更に言うなら「元・要素」も絶対に変化しません。
なにせ『そのまま』ですから、
全ての「定義域」は「終域」と必ず一致します。
多くなっても少なくなってもいけません。全部です。
形式的には↓みたいに表されます。
集合「 S 」とすると、
恒等写像は『 id_S,1_S 』
合成 Composition
|| あーなってこうなってそうなら、あーなってそう、みたいな感じ
「合成」っていうか、「省略」って感じのものです。
「あれ」やったら「これ」になって「それ」になるなら、
「あれ」やったら「それ」になる(「これ」をやったら)みたいな。
形式的には↓
まず「写像」を二つ用意します。(合成したいんで)
「 f:A→B 」「 g:B→C 」
これの「合成写像」を、
g\,∘\,f:A→C\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,g\,∘\,f
と書きます。
これが一番使われてると思いますが、
他にも『 f;g,fg 』みたいに書かれたりします。
↑は書き方で、これが表すものは↓です。
↓みたいに「定義」されてます。
(g\,∘\,f)(x):=g(f(x))
(左のやつが、右みたいに定義されてるって意味)
詳しくは『代数学』で扱いますが、この一連の操作は、
『単位律』と『結合律』を満たします。つまり↓
結合律『 h\,∘\,(g\,∘\,f)=(h\,∘\,g)\,∘\,f 』
単位律『 id\,∘\,f=f\,∘\,id=f 』
以上を踏まえると「逆写像」の性質が説明できます。
逆写像の性質
・一意性(それだけ、みたいな意味)
「逆写像」は一個しかないぞーって意味。
詳しいことは『代数学』で扱います。
証明の方針は単純で、
「逆写像」が 2 つあることを前提に話を進めていくと、
その 2 つの「逆写像」が同じになる、という感じ。
・対称性
これは形式で見た方が分かり易いかも。
『 (f^{-1})^{-1}=f 』これのことです。
「逆の逆は元通り」みたいな。
まあ普通な感じしますよね。
・自己逆性
要は「恒等写像」は「逆写像」でもあるってこと。
これはすぐわかることなので、ここまでで良いでしょう。
以上で「写像」については一通り終わりです。
気になる方は、重要な定理についても確認をどうぞ。
『ベルンシュタインの定理』(単射と全単射の関係)