基数 Cardinal Number


|| 基数もとい、でかさ数

要は「でかさ」を表す「数」のことです。

「自然数」の一般化、というのが厳密な説明になります。

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なんやかんやのサイズはこの数値で表すことになります。

いや、逆ですね。あらゆる「大きさを表す数」は、基数です。





目次


濃度「集合の大きさを表す概念」



可算集合「数えることができる大きさの集合」

   有限「自然数で表すことができる」

   可算無限「最小の無限の大きさ」

      可算無限濃度「自然数全体の集合の大きさ」


   有理数の濃度「自然数と有理数の間に全単射がある」

   整数の濃度「負の数と自然数の全単射を考える」



非可算濃度「数えることができない大きさ」

   実数の濃度「自然数との間に全単射が無い」








きっと耳慣れない単語かと。

それに、これはいろいろな使われ方をされてます。

意味に統一感が薄くて、強いて言うなら「大きさ」。




ともかく、あやふやな言葉というものは使いにくいものです。

なのでこの単語が普及しないのは、まあ仕方がないことなのかなと。




でも、使いにくいんですけど、

それでも、これはかなり大事なんじゃないかと自分は思います。



というのも、よくわからん「無限」について解釈するとき、

この概念を使わないとまじでよく分からんのです。

なにより単純に「サイズ」は大事でしょう。なんでも。




さて、では数学的にはどんな感じで使われてるかというと、

『集合論』では、集合の大きさ「濃度」をこの数値で表したりします。

なんで「濃度」?って思うかもしれませんが、それは後ほど。






というわけで、さっそく「濃度」について見てみましょうか。

厳密には「 Cardinal 」としての「基数」について見ていきます。

数学で使われるのは基本的にこの意味です。







濃度 Cardinality


|| カーディナリティって響きがなんか良い

要は「集合」が持ってる「要素」の『個数』のことです。

サイズを測る指標としては、すごく当たり前な感じしませんか?




といっても、ちょっとこれだけじゃ問題あるんですよね。

というのも「要素」が『有限』なら簡単なんですが、

「要素」が『無限』の時は、はてどうなるんでしょう?




例えば「 S=\{5,8,12\} 」なら、その「基数」は 3 です。

有限なら、こうして直観的に理解できます。




これを、形式的には↓みたいに表します。



|S| もしくは card(S)



つまり↑の例なら「 |S|=3 」です。






さて、『有限』の時の例は分かりましたが、

『無限』の時はどんなものが考えられますか?



例えば、一番有名な例で考えるなら、

「自然数全体」のサイズとかは、直観的にも『無限』ですよね?



それと同じく「 2 の倍数全体」のサイズとか。

他にも「実数全体」の大きさとかも。




しかしはて、これ、どうやって『サイズ』を考えれば良いんでしょう?



「有限」のものは単に数えれば良いですけど、

「無限」みたいな、こういうものの大きさは?

すべて均一に「無限」? いや、まさかですよね。






そんなわけで、とりあえず理解に必要な知識を紹介していきましょう。

このへんの区別をするための単語なので、是非覚えてください。







可算集合 Countable Set


|| 可算って書くとなんか難しそうに

要は「数えることができる」集合のことです。



『自然数』にめちゃくちゃ関係のある「集合」になります。

数学ではどうにかこうにかこれ作りたい感じ。

自然数は人間にとって最も直観的なので。

(文字数とかも有限)




内訳は、大きく分けて 2 つになります。



一つが『自然数』の「どれか」だってことを表す「有限」。

一つが『自然数』の「全て」を扱う「無限」です。




区別するために、「無限」なら「可算無限集合」と言います。

なぜか区別しない書籍もあるので、ちょっと注意。(マジで謎)




んでは、さっそく形式的に見ていきましょうか。






有限 Limited


|| 限りが有ります

これはもう単純です。要は『限りがある』感じ。

数的には『自然数』のどれかを表します。




例えば、なにか(荷物とか)あったとします。

たくさんでもちょっとでも良いです。



これが「有限」ということは、

その中の『要素に「番号」を割り当てられる』ということ。

つまり、そんな写像があるってことです。




具体的な例で確認してみましょう。

とりあえず「 ●,×,▼ 」があったとします。

これに番号を割り当ててみましょうか。すると↓



1\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,●

2\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,×

3\,\,\,\,\,↦\,\,\,\,\,▼



見て分かる通り、当たり前のことをやってます。

要は「数え上げ」です。いっこ、にこ、さんこ、って感じの。

ナンバリングとかいう言い方もありますね。

(こんなだから可付番とも)






これを形式的に表すと↓みたいな感じになります。




集合 S_l が「有限」なら、

自然数の集合『 N=\{1,2,3,4,5,...\} 』との間に、

『全単射は存在しない』上で、



集合 S_l から集合 N への「単射」が存在する。

意訳すると、割り当てられない要素が N にある。

(例えば超でかい数とか)


もしくは


集合 N から集合 S_l への「全射」が存在する。

意訳すると、写り先が被ってしまう要素が N にある。

(自然数全体より小さいってこと)




これは直観的にすぐわかると思います。

要するに『有限』の特徴を形式的に表現してるだけなので。




はい、ともかく問題はこっからですね。

↓から、遂に「無限」について触れていきます。






可算無限 Countable Infinity


|| 数えられるけど限りは無いです

これは、いろんな定義のやり方があると思います。

たぶん、一番直観的なのは『自然数全体の大きさ』ですね。




↑の「有限」の形式的な定義にならうなら、



S_N が「可算無限」なら、

「自然数全体」の集合 N との間に「全単射」が存在する

となります。




例えば「 2 の倍数全体」とかなら、

自然数全体との「全単射 2n 」が存在するとか。




さて、ではこれを元に本題に入っていこうと思います。

ようやっと「基数」についてです。







可算無限集合の濃度


|| 無限と濃度の取り合わせ

簡単に言うと、特に問題ないからこうしよう、

という感じに、これは「名前を付けられました」。



その名前は「超限基数 Transfinite Cardinal」です。

記号では「 \aleph_0 (アレフ・ゼロ)」と表されます。



つまり「有限集合 S_l 」の『濃度』は「 |S_l|<\aleph_0 」です。




この「無限集合」の『濃度』の定義は、

「無限集合」に『全単射』を適用したことによって定められました。



つまり、これは決まりです。

「~だから、それは無限集合の基数だ」(帰結)ではなく、

「無限集合の基数を~とする」(決まり)です。




とはいえ、この定義は直観的に正しく見えます。

特に矛盾も生じませんし。



それもそのはずで、「全単射がある」んです。

全ての「元(要素)」が、1つ1つ結びついてます。

これは、要素の個数が一致しないと実現できません。




こんな感じにパッと直観的に考えても、

やはり、サイズ(要素の数)が同じように思えます。




実際、『有限』で考えると当然の話でしょう。

要素数が 2 の集合が二つあれば、

その二つの集合の間には簡単に全単射を考えることができます。






なぜ単に「要素数」ではなく「濃度」なのか


さて、しかしそもそも、なぜ「濃度」なんでしょう?

別に『要素数』でも、特に問題無いように思えますが。



当然ですが、これには相応の理由があります。

↓では、それを説明していきます。




というわけで、具体例を見てみましょう。

具体的なものを見れば、なんとなく言いたいことが分かるので。




というわけなので、

まず基準となる『自然数全体 N=\{1,2,3,...\}

これの『濃度 \aleph_0 』を念頭に置いて考えてみましょう。



ついでに、これと比較するために、

2 の倍数全体(偶数)」の「濃度」を考えてみます。




ともかく、これらを並べて見てみましょうか。

それが一番見易いと思うので。



1,2,3,4,5,6,7,8,9,...

2,4,6,8,10,12,14,16,18...



一見すると、どう見ても「自然数」の方が大きく感じます。

まあ当然でしょう。偶数は自然数の同値類、いわば『一部』ですし。




いや、でも、この二つには『全単射が存在する』ことも事実です。

考えるまでもなく、この事実はかなり直観的に理解できます。



f:N→2N\,\,\,(n↦2n)



なぜなら、例えば↑みたいに、簡単に「全単射」が作れてしまいます。

単に 2 倍するだけなので、議論もくそも無いでしょう。




ということは、『定義から考える』と、

この二つのサイズは「直観的には同じ」なんです。



ちょっと変な話ですけど、

明らかに「一部」のものが、明らかに「同じ大きさ」になります。

はい、二つの直観が、ここでぶつかるわけです。






へ? って話ですよね。なんか、変です。

じゃあおかしいの? ってなると思う気持ちはよく分かります。



でも、結局これはどちらも間違ってはいません。

それを表すために、ここで『濃度』って言葉が登場します。




というわけで、ちょっと考えてみてください。

「要素数」の比較ではなく、「濃度」の比較という感じに。




「要素数」で考えると「自然数全体」の方が大きく感じます。

2 の倍数は、どう考えても自然数の『一部』ですので。



しかし、『濃度』だとどうでしょう?

自然数はそのままに、 2 の倍数を圧縮して考えてみます。

すると、なんか同じくらいな感じになりませんか?




いわゆる「無限の広がり」から、

「一部の無限の広がり」を取り出しても、

それは「無限の広がりと同じ大きさ」だよね、って感じ。



イメージとしては、「無限の大きさのコップの水」から、

「一部の無限の量の水」を取り出しても、

その水を入れるには無限の大きさのコップがいるよね、って感じ。




こう考えると、そうおかしな感じでもなくなるんじゃないでしょうか。

要は「同じような無限」なんじゃ? って話なので。






これを実感するために、もっと具体例を見てみましょうか。

無限が直感から遠ざかる感じをもっと味わってみましょう。




↑では明らかに小さそうな、一部(偶数)を見てみたので、

今度はでかそうなの(自然数全体を含む)と比較してみましょうか。

ちょっといきなりスケールを上げてみます。




「自然数 N=\{1,2,3,4,5,...\} 」と、

「正の有理数全体 Q^+=\{(1,1),(1,2),(1,3),...\}



この二つの大きさ(濃度)を比較してみます。

当然ですが「正の有理数全体」は自然数全体を含んでます。




いや、絶対「正の有理数」の方がでかいでしょ、

という感覚はすごくよく分かるんですけど、これ、実は同じです。

ちょっと長くなりますが確かめてみましょうか。







自然数と正の有理数


これは「有理数の定義」から、割り当てる方法を考えます。

そのために、そうですね、表でも作りましょうか。


1 2 3 4
1 1/1 2/1 3/1 4/1
2 1/2 2/2 3/2 4/2
3 1/3 2/3 3/3 4/3
4 1/4 2/4 3/4 4/4


縦軸を「分母」横軸を「分子」とすれば、

これで表の中身が全ての「正の有理数」になります。




さて、では「番号の割り当て」に関してですが、

パッと見、横だけの操作じゃ難しそうです。

なにせ終わりが無いので(分母 1 の行だけで無限個)




となると、横の操作だけではなく縦の操作も必要になりそうです。

横から全部、次に縦、というのは無理そうですからね。

同じ理由で縦の操作だけも無理そうだと分かります。




というわけで「平面的」に見て、

「斜め方向」なら、一方向から割り当てができそうな気がします。




とりあえず、『見える表の端』に注目しましょう。

そしてこれは唯一「表の左上」だけなので、ここからスタートします。



「左上から右下」だと「無限」方向に行くので×

「右下」は見えないので、とにかくこの方向はダメですね。



となると「右上から左下」か「左下から右上」

このどちらかの操作になります。

といってもまあ、方向が違うだけなのでわかりやすい方で。




はい、というわけで「上」からの方が直感的なので、

「表の左上」スタートで「右上から左下」の操作、

これを採用することにします。



すると、↓の表みたいな割り当てが考えられます。


1 2 3 4
1 1/1\,(1) 2/1\,(2) 3/1\,(4) 4/1
2 1/2\,(3) 2/2\,(5) 3/2 4/2
3 1/3\,(6) 2/3 3/3 4/3
4 1/4 2/4 3/4 4/4


しかしこれを見ると、なんか被りがありますよね。

1/1,2/2,3/3 」は「 1 」ですし。

1/2,2/4 」は「 1/2 」です。




「全単射」を考えると被りはよろしくないので、

この被りには番号を割り振らないことにしてみましょう。

すると↓みたいになります。


1 2 3 4
1 1/1\,(1) 2/1\,(2) 3/1\,(4) 4/1\,(6)
2 1/2\,(3) 2/2 3/2\,(7) 4/2
3 1/3\,(5) 2/3\,(8) 3/3 4/3
4 1/4\,(9) 2/4 3/4 4/4


するとあら不思議、

「正の有理数全体」に「自然数」が割り当てられてしまいました。

分母分子の行列は、その倍数の個所が穴開きです。( 1 以外)




この単純な操作を繰り返すだけですから、

どんなに大きな「正の有理数」でも( 1315418621/2 とか)

どんなに複雑な「正の有理数」でも( 6941582/7247 とか)



こうすれば、必ず「自然数」が割り当てられます。




はい、つまりはそういうことです。

「正の有理数」の「基数(濃度)」もまた『 \aleph_0 』になります。




じゃあ負の数は? ってなると思うので、

ついでに「整数」についても見ていきましょうか。

といっても、こちらは簡略化します。







自然数と整数の濃度


これのアイディアの源泉は「偶数」と「奇数」です。

本質的には「 2 進数」表記からになります。




簡略化のために、ここで「偶数全体の集合」は「 even 」、

「奇数全体の集合」は「 odd 」としておきましょう。




すると「自然数」と「整数 Z 」の間には、

↓のような『全単射』があることが分かります。



\displaystyle f(n)=\begin{cases}\displaystyle\frac{1-n}{2}&(n∈odd)\\\displaystyle\frac{n}{2}&(n∈even)\end{cases}




なんだかややこしく見えますが、

やってることは単純です↓(こっちから↑が出来上がる)


1 0
2 1
3 -1
4 2
5 -2
6 3


はい、これで『整数』が作れてしまいます。

こう見ると当たり前のように感じますね。




というわけで「自然数」と『濃度』が同じだと分かりました。

↑みたいにすれば「負の数」も同様だと分かります。

このアイディアを使えば「有理数全体」の『全単射』も同じ感じ。






まとめると、濃度は↓みたいになります。

ちょっと信じられない感じの結果ですが。



|N|=|Z|=|Q|






というわけで、最後に「実数」はどうなのか見てみましょうか。

結論から言うなら、このサイズは『自然数より大きい』です。

これを説明するために、次のものを紹介します。

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