数学定数 Mathematical Constant


|| 基本的な数のこと

0,1,π,i,e 」とかのことです。

他にもありますが、基本となるこれらをとりあえず紹介します。

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目次


1 「本質的には『在る』という感じ」

0 「これは『無い』という感じ」



円周率 π 「円から生まれた子」



虚数単位 i 「高次方程式から生まれた子」



オイラー数 e 「指数関数と微分の子」


   連続複利「なんかよく分かんない定数を導く」

   オイラー数の近似「力業で↑を近似してみる」


   指数関数の微分「指数関数を微分してみると」

   逆関数をちょっと「指数関数の逆関数を考える」


   対数関数「指数の変な計算方法」

   対数関数の微分「対数関数を微分してみる」


   テイラー展開「オイラー数の十分性」








数学で扱われる基本的な「数」と言えば↑のもので、

数Ⅲまでやってる人はどれも馴染み深いものかと思います。




ともあれ、これ、そもそもなんなんでしょ?

なんか分かるけど、いやよく分からんですよね。




0,1 はかなり直観的です。

円周率 π もまあ、割と直観的です。



しかし、いや、

虚数単位 i は、えっ、直観的?

オイラー数 e も、はい、なんか、ん?って感じ。




これらは役割ははっきりしてますけど、

具体的に何のことを指してるのかさっぱりです。




でもまあ!それで!良いんです!

は? と思った方、どういうことかは↓で説明いたします。

どうぞご覧ください。







一(いち、ひと) 1\,\,\,\,\,\mathrm{One}


|| 最も直観的で原始的ではっきりしてる数

この数は『基準』と捉えても問題無いです。



これは、いわゆる『存在』を意味する「数」になります。

この『存在』から、必然的に対になる『無』の存在が。




そもそも、まず「在る」ことが分からないと『複数』が生まれません。

となると『数え上げ』すらこれが無いとできないわけです。



「一個」というものの『存在』が確定するから、

以降の「二個、三個…」の存在も成立するわけですね。




そしてこれから、人間の直観に根差す『自然数』が生まれます。



はい、ともかくなんかこれですっきりじゃないですか?

『自然数』が出た時点で議論はもう終わりで良いでしょう。

へいてーい。






零(れい、ぜろ) 0\,\,\,\,\,\mathrm{Zero}


|| 何も無いということ

この数もまた『基準』と捉えて問題無いです。



ただし「 1 」が『直観の基準』なら、

0 」は『数の基準』と言えます。




実際、これは『計算で不都合が生じるから』必要なんです。

よく考えてみれば、日常ではそんなに使わないでしょう。




今でこそ「 10 進法」が採用されていて見慣れてますが、

10 」は、別に「 X 」って書いても良いわけでして。



実際、これが無くても発達した文明は存在します。

それくらいあっても無くても良い感じのものではあるんです。



でも、これは『存在する』と現代の人間は直観できるわけで。






しかし、これは「昔の人間」にとっては不合理なんです。

というのもこれが「自明な『数』」では無い時代もあったんです。

現代の感覚だとちょっと信じられませんが。




というのも、

「アルキメデス」「アリストテレス」と、有名な人たちがいますよね。

何した人たちなのかよく分かんなくても、名前は広く知られてます。



一言で言って、この人たちは偉大な先駆者です。

だから有名って感じでもあるんですが、それくらいすげー人たちです。




しかし、ここで思い出してみましょう。

彼らは「人間」で、そして『人間は間違える』ということを。




ここでオチを。

↑で挙げた二人は、この『 0 の存在を認めなかった』んです。



このどう考えても『存在してるように感じられる』ものを、

『科学と哲学の偉大な先駆者』ですら、否定したんです。




でも、現代人である我々はどうでしょう?

『いや、 0 が無いと不便じゃね?』ってなりませんか?



だって、例えば「時計から 0 が消えます」見辛いです。

例えば資本から「 0 が消えます」分かり難いです。

まして「引き算で 0 が使えません」いやいや。




いくらでも、こんな感じの理由は見つかるでしょう。

それくらい現代人である我々にとって『 0 の存在』は明らかです。




また数学的に見ても『 0 の存在』は不可欠です。

自然数を「集合論的に」定義するとき、初期値として最高なので。



具体的には『空集合』を「 0 」の解釈としてます。

0:=\{\}=∅



↑で言ったように『何もないものの存在』そのものです。

「空集合」の意味解釈は『何も入ってない枠』なので。



この定義は「直感的」かつ「最適」で、良い感じに噛み合います。

理解し易くて、しかも使いやすいって、もう最高ですよね。




というわけで「自然数」に落ち着いたのでここまでとします。

「自然数」について、詳しくは『数』の記事で扱ってるのでどうぞ。







円周率 π Pi


|| 円から生まれた円のための数

これは『円を考えるための数』です。



超絶重要な定数なんですけど、日常じゃ全然見ません。

知名度のわりに、使いどころもよく分かりません。

でも、そんなもんでしょう。




人間が直感で理解できるのは『自然数』です。

あらゆる「数的な量」は、全て自然数に置き換えられます。

そうする理由は「理解できるように」するためです。




この「円周率 π 」は、そういった意味では不適格です。

単に計算上で出てくる数というだけで、正確な値は導けません。



この理由は、いわゆる「無理数」に当たる数だからです。

より厳密には「超越数」に分類されますが、これも無理数です。

定義としては「有理数ではない実数」みたいに定義されてます。






人間の直観で理解できる限界は、恐らくは『有理数』までです。

これ以上に複雑になってしまうと、もう理解できません。



実際「 3.1415926535... 」は、単なる近似値でしかありません。

この書き方はあくまで『有理数』としてのもので、

永遠に正確な値を算出することはできません。




そう、これは『正確には分からない数』なんです。

より正確に言うなら「上限と下限しか分からない数」とか。




これを正確に定義するには『円の存在を仮定』しないとダメです。



具体的には、円の存在から『円周 Cir 』を考えて、

「円の直径の長さ」の紐を考えれば、



Cir=π×(直径)



これを満たす「定数 π 」が考えられるはずです。

これが言葉の意味する通り『円周率』になります。



あくまで『計算のための定数』であることを押さえておきましょう。



より一般的に書くなら、

『直径を 2 つの半径 2r 』で表して、


(円周)=2πr

というのが良く見られますね。






近似値の算出には『ライプニッツの公式』が直感的です。

「整数」と「極限」だけで、綺麗にまとまってます。



\displaystyle \lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^{n}\frac{(-1)^k}{2k+1}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+...=\frac{π}{4}



これ発見した人すげーっすよね。

ちなみに発見したのは「マーダヴァ(最初)」さんと、

「ライプニッツ( 300 年後)」さんです。







虚数単位 i Imaginary Unit


|| 二次方程式の一般解を説明するもの

要は『高次方程式の解の説明のための数』になります。



そしてこれは後出しで分かった感じですが、

他にも「数の移動先を次元拡張するための数」とも。




どういうことかというと、実際に扱ってみたら、

この数には明確な「意味」があった感じです。



「円周率」のように、単に計算のために必要というだけでなく、

その『数の存在』によって示される意味が。




その意味とは、

実数が「厚さの無い平面を真横から見た」ものなら、

複素数は「厚さの無い平面を傾けて見てみた」もの、になります。




これは『オイラーの公式』から見た「解釈」です。


\displaystyle e^{iθ}=\cosθ+i\sinθ


この式は視覚的には「半径 1 の円」に見えます。



これは『テイラー展開』から発想を得て導かれました。

そしてこれが、↑の『虚数単位の解釈』の「根拠」になります。






ただし解釈の「発想」はまた別です。

この「発想」は、↓の「極形式」から得ています。


\displaystyle z=r(\cosθ+i\sinθ)




つまるところ『実数』であれば「 \sinθ=0 」で、

それ以外のものは「実数直線上には無い」わけですね。




そう、つまり↑で言ったように『虚数単位』があるから、

「数の移動先」が、『直線上の左右( -\infty,+\infty )』から、

『平面上の全方位』へと拡張されてるわけです。






確認しましょう。

『実数上の動き』は、あくまで「左右」に限定されてます。

大小比較によって、直観的には「線上の移動」しか起こりません。




しかし『虚数単位』を考えて「複素数」に概念を拡張することで、

この「左右」に「上下」が追加され、

形成された『平面上の移動』を考えられるようになりました。




この平面のことを『複素平面』と呼んでます。

この平面上に、複素数(実数を含む)はあるわけです。




ということは、移動に関してもまた同じことになります。

「実数の 2 乗」は、必ず「正の実数」にできる操作です。



しかし『複素数の 2 乗』では、そうとは限りません。

それを確かめるために、単純に 2 乗してみましょうか。


z^2=r^2(\cosθ+i\sinθ)^2

=r^2(\cos^2θ-\sin^2θ+2i(\sinθ\cosθ))



見て分かる通り、単に「正」にはなりません。

そしてそもそも『正の複素数』とは一体何なのでしょう?






実はこうなるともう『大小比較』もできなくなります。 

つまり「 0 以下」かどうかすらもう分からんのです。

となると必然的に『正と負を定義できない』となるわけでして。






とまあ、だいたいこんな感じです。

事態を拡張してややこしくするのが「虚数単位」のお仕事になります。



単にややこしくしてるだけなら不要なんですけど、

より細かい遡及的な操作を行うとき、こいつは必要になります。

具体的には「高次的な存在の解を求める」時とか。




でもまあ「円周率」同様、日常じゃ使いませんね。

少なくとも現代では。







オイラー数 e Euler’s Number


|| 指数関数と微分を単純にしたくて

いわゆる『微分の単位としての数』がこれ。



別名「ネイピア数」「自然対数の底」とか。

『解析学』ではめちゃくちゃ重要になる定数です。




発想の『必要条件(具体例)』は、

「連続複利計算」や『指数関数と対数関数』の「微分」なんかです。



発想の『十分条件(根拠)』は「テイラーの定理」になります。






連続複利


はてさて、そもそも『連続複利』ってなんなんでしょ?

なんとなく「金を借りた時の手数料っぽいの」という感じでは?



まあ、普通の人は日常じゃまず見ないですよね。

というわけで、詳しく見てみましょうか。




これは「金融経済学」由来の知識になります。

まず『元金』と『利子』について、ぼやっと覚えてください。



元金 Principal は、いわゆる「貸した金・投資した分の金」です。

利子 Interest は、要は「リターン・増える分の金」のことです。




というわけで、さっそく『連続複利』について見ていきましょうか。

単語はふわっと覚えときゃだいたいなんとか分かります。



さて、では『元金 p 』として『年利 i 』としましょう。

そして「預金して」から、この状態が「 n 年」続いたとします。



さて増えた結果「合計(元利合計)」はいくらになったでしょうか?




1 年目だと↓ですね。

\displaystyle p+pi=p(1+i)


2 年目だと↓になります。

\displaystyle p(1+i)+p(1+i)i=p(1+i)(1+i)=p(1+i)^2



この操作を続けていけば『 n 年目』には↓でしょう。

\displaystyle p(1+i)^{n-1}+p(1+i)^{n-1}i=p(1+i)^n






この辺までは、まあ普通の話です。

んで、こっからちょっと分割して考えてみます。



どういうことかというと、「半年ごと」に貰うようにして。

その代わり「利率も半分」にしてみます。




すると「半年」で見ると↓みたいになります。

\displaystyle p+p\frac{i}{2}=p\left(1+\frac{i}{2}\right)


そしてこれを「 1 年」で見るなら↓です。

\displaystyle p\left(1+\frac{i}{2}\right)+p\left(1+\frac{i}{2}\right)\frac{i}{2}=p\left(1+\frac{i}{2}\right)\left(1+\frac{i}{2}\right)=p\left(1+\frac{i}{2}\right)^2



んで、これを「 n 年」続けたなら、

\displaystyle p\left(1+\frac{i}{2}\right)^{2n}






さて、では今度は「期間を半年」「利率を半分」から、

「期間を 3 分割」「利率も 3 分の一」にしてみます。




こうしたら「 1/3 年」から「 1 年」を作って、と。

↑と同じような操作になりますから、



\displaystyle p\left(1+\frac{i}{3}\right)^{3n}

となるのは、分かりますよね?






となると「 k 分割」は↓だと分かります。


\displaystyle p\left(1+\frac{i}{k}\right)^{kn}




ここで見易くするために「定数 i,k 」をまとめちゃいましょう。

「分割期間」と「定数」が一緒に大きくなるように、↓みたいに。

\displaystyle v=\frac{k}{i}\,\,\,\,\,⇒\,\,\,\,\,k=iv




すると↑の式を↓みたいに書き直せます。


\displaystyle p\left(1+\frac{1}{v}\right)^{v(ni)}



というわけで、「期間」を「無限分割」に拡張してみましょう。

そしたら、式を↓みたいに書けますね。


\displaystyle \lim_{v \to \infty}p\left(1+\frac{1}{v}\right)^{v(ni)}=p\lim_{v \to \infty}\left[\left(1+\frac{1}{v}\right)^{v}\right]^{ni}




てなわけで、これの中でよく分かんないのは↓の部分だけになります。


\displaystyle \left(1+\frac{1}{v}\right)^v




こんな感じで、なんか「変な定数」が導かれました。

この数値が「何を意味しているのか」は「全く分かりません」が、

『連続複利計算』では、これが使えると判明したわけです。






オイラー数の近似


さて、↑のように「変な定数」は分かりましたが、

具体的にどんな感じの数値になるか、分かんないと使えないです。




というわけで、まずは力業で求めようとしてみます。

「二項定理」を使ってガツガツ行ってみましょうか。



\displaystyle \left(1+\frac{1}{n}\right)^n=\overbrace{\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(1+\frac{1}{n}\right)…\left(1+\frac{1}{n}\right)}^{n}

\displaystyle ={}_n\mathrm{C}_01^n\left(\frac{1}{n}\right)^{n-n}+{}_n\mathrm{C}_11^{n-1}\left(\frac{1}{n}\right)^{n-(n-1)}+…+{}_n\mathrm{C}_n1^{n-n}\left(\frac{1}{n}\right)^{n}

\displaystyle =1+n\left(\frac{1}{n}\right)+\frac{n(n-1)}{2 ・ 1}\left(\frac{1}{n}\right)^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3 ・ 2 ・ 1}\left(\frac{1}{n}\right)^3+…+\left(\frac{1}{n}\right)^{n}

\displaystyle =1+1+\frac{1}{2!}\left(\frac{n}{n}\right)\left(\frac{n-1}{n}\right)+\frac{1}{3!}\left(\frac{n}{n}\right)\left(\frac{n-1}{n}\right)\left(\frac{n-2}{n}\right)+…+\left(\frac{1}{n}\right)^{n}


\displaystyle =1+1+\frac{1}{2!}・1・\left(1-\frac{1}{n}\right)+\frac{1}{3!}・1・\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)+…+\left(\frac{1}{n}\right)^{n}




ちょ、ギブって感じですけど、極限とればこれでいけそうっすね。


\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{c}{n}=0


「定数 c 」なら↑ですから、最後には綺麗に残ります。


\displaystyle e=1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+\frac{1}{5!}+\frac{1}{6!}+…




んで?という感じですけど、一旦、この話題は置いときます。

次は別のアプローチを見てみましょう。






というわけで、なんの関連性があるんだってくらい全く別の話へ。

具体的には『指数関数』と『微分』の話に入っていきます。






指数関数と微分


とりあえず「掛け算」の自然な拡張になる『指数関数』を。

これはそのまま「指数」についての関数です。




具体的には↓みたいな。


f(x)=a^x



これに『微分』操作を行う場合、



\displaystyle \frac{d}{dx}a^x=\lim_{h \to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{(x+h)-x}=\lim_{h \to 0}\frac{a^x(a^h-1)}{h}=\lim_{h \to 0}a^x\frac{a^{h}-1}{h}



ここで『 a^x は変わらず』、

\displaystyle \lim_{h \to 0}\frac{a^{h}-1}{h}

の部分は「 a で決まる」定数です。




そう「 a 」で決まる『定数』なんですよね。

とすると、定数を良い感じにとれば『 1 』にできそうなわけで。



すると『微分』しても「変化が無い関数」が作れるじゃありませんか。

これはいわば『微分の恒等変換』になるわけで、あると捗ります。

+0,×1 みたいな)



例えば、これを使えば『指数関数の逆関数』と対応をとれるわけです。

-0=+0,÷1=×1 みたいな)




てなわけでさっそく作ってみようそうしようと、張り切ってスタート。

まずはそういう「都合の良い定数」を定義しちゃいます。


\displaystyle \lim_{h \to 0}\frac{e^{h}-1}{h}=1



こうなる『定数 e 』を、ここで定義したわけです。

これが「オイラー定数」になります。



これは「微分」してるんで『接線の傾き』と捉えてOKです。

そういう「 e 」と、まあそんな感じに決まってます。

なので「 a を決めて」『接線の傾き』から、近似していけます。






これが『定義』という点に注意しましょう。

この時点では、まだ「連続複利」とは全く関係がありません。



まあ結論から言っておくと、「連続複利との関連」は、

指数計算から偶然一致した『結果論』でしかないのですが。




ともかくまだ、この時点ではよく分かりません。

なので「逆関数」からアプローチをかけてみることにします。




「関数」と、その「逆関数」の、

y=x において対称な点における接線』の、

「傾き 1 のものは、片方あればどっちも存在する」ので、



これ使ってなんとかやれないか、みたいな感じで。

まあ、どうにかこうにかやってみました。




なにより『対数関数』の「代数的性質」が特殊なんです。

この性質を使えばワンチャンいけるんじゃ?みたいな。






逆関数のおさらい


とりあえず『逆関数』についてざっとおさらいしておきます。

感覚的には『関数を 90 度傾けて反転させた関数』のことです。




基本は「 x,y 軸を入れ替えるだけ」なので、

90 度傾ける」は「 y 軸を縦から横」に、

「反転」は「↓が正になってる x 軸の正方向を↑」にしてます。



形式的には、

y=f(x) 』を『 x=g(y)⇒y=g(x) 』と表す感じ。




具体的には↓みたいな。

y=x+1 なら x=y-1 で、逆関数は「 y=x-1



複雑なのだと、

y=\sin{x} なら x=\arcsin{y} だから、逆関数は「y=\arcsin{x}




こんな感じのやつが逆関数です。

ほんと、単に軸を変えただけ。






ここで、とりあえず目的を再確認。

「オイラー数」を説明する上で知っておきたいのは、



y=x について対称な点』で、

「元の関数」に『接線の傾きが 1 の点がある』なら、

「逆関数」でも『接線の傾きが 1 の点がある』ってことです。



要は y=x を平行移動させただけ。

もっと言うと、 y=x の逆関数は y=x っていう話。

まあ、一応押さえておきましょう。




ざっと確認を。

関数「 y=f(x) 」を考えて、その「逆関数 y=g(x) 」を考えます。



「逆関数」の性質から、

y=x 』を挟んだ対称な点は、丁度逆になります。



つまり「関数 (a,b) 」なら、「逆関数は (b,a) 」です。




これは「逆関数の定義」から、単純な事実として導けます。

なにせ「 y=f(x) 」です。

そしてこれを『 x=g(y) 』としたものが逆関数です。



そこで、逆関数の座標は「 (b,a) 」と考えられてます。

まだこの時点では仮定ですが、「逆関数」は『 y=g(x) 』です。



つまり『 (b,a) 』とすれば、「 y=x を軸とした」、

もとの関数の座標 (a,b) と対称な点とできます。




つまり「 y=f(x) 」が「 (a,b) 」なら、

y=x を挟んで対称な点』を考えると、

「逆関数 y=g(x) 」なら「 (b,a) 」になります。




具体例で見てみましょうか。



y=x を軸に対称な点」を考えると、

y=2x で「 (1,2) 」なら、

y=(1/2)x では「 (2,1) 」です。






そして『その点の接線の傾きが 1 』だったら、

そもそも「関数が作る図形」もまた対称なので、

もう片方の傾きもまた 1 になります。






対数関数から見る


対数関数っていうのは、『指数関数の逆関数』のことです。

発想も「指数を知りたい」から、というのが原点にきます。




ざっと見てみましょうか。

対数関数「 \log_ax 」は↓みたいに定義されます。

見ての通り『指数を計算』してることを押さえておきましょう。


y=a^x\,\,\,⇔\,\,\,x=\log_ay



ちょっと直観的じゃない感じですね。よく分かりません。

でもこんな定義をされてるせいか、なんか変な振る舞いをするんです。




その一つが↓で、


\log_at+\log_au=\log_a(t・u)



同じく↓も導かれます。


\displaystyle \log_at-\log_au=\log_a(t/u)=\log_a\left(\frac{t}{u}\right)




具体例で見てみましょう。

\log_22^2+\log_22^3=2+3=5=\log_22^5=\log_2(2^2・2^3)


逆だと↓ですね。

\displaystyle \log_22^2-\log_22^3=2-3=-1=\log_22^{-1}=\log_2\left(\frac{2^2}{2^3}\right)




『指数の計算』は「積」でしか行われませんから、

↑のような指数の計算では、こんな結果になるのは必然です。



でも、直観的にはパッと分かんないですよね。




んで、更にはこんなのもあります。

c\log_at=\log_at^c




これも具体例で見てみましょう。

それが分かりやすいんで。


4\log_22^2=4・2=8=\log_22^8

=\log_2(2^2・2^2・2^2・2^2)=\log_2(2^{2})^4






とまあ、こんな感じの特殊な性質を持ってます。

これを利用して、どうにかしたい感じです。






対数関数の微分


というわけで、さっそく『微分』してみます。



\displaystyle \frac{d}{dx}(\log_ax)=\lim_{h \to 0}\frac{\log_a(x+h)-\log_ax}{h}

\displaystyle =\lim_{h \to 0}\frac{\log_a\left(\frac{x+h}{x}\right)}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{1}{h}\log_a\left(1+\frac{h}{x}\right)

\displaystyle =\lim_{h \to 0}\log_a\left(1+\frac{h}{x}\right)^{\frac{1}{h}}




おおう、なんか↑の形になってきましたね。


\displaystyle h→0\,\,\,\,\,⇔\,\,\,\,\,\frac{1}{h}→\infty


てなわけで、これを使って変形しておきましょう。


\displaystyle \lim_{h \to 0}\log_a\left(1+\frac{h}{x}\right)^{\frac{1}{h}}=\lim_{h \to \infty}\log_a\left(1+\frac{x}{h}\right)^{h}




さて、それでは大詰めです。



a=e 」なら、対数関数は『逆関数』なので、


『指数関数 e^x 』は「 x=0,y=1 」で接線の傾きが 1 ですから、

対数関数の接線は『 x=1,y=0 』で 1 です。

\log_a1=\log_aa^0=0



指数関数 e^x の接線については、

e の定義から『 (e^x)´=e^x 』なので、

e^x=1\,\,\,\,\,⇒\,\,\,\,\,x=0\,\,\,\,\,⇒\,\,\,\,\,e^0=1






ということは↓だということが分かります。

一応「 a=e 」「 x=1 」です。

この時の「 \log_ax の接線の傾き」が↓になります。


\displaystyle \lim_{h \to \infty}\log_e\left(1+\frac{1}{h}\right)^{h}=1=\log_ee



はい、というわけでやっとこさ↑から↓が求められました。



\displaystyle \lim_{h \to \infty}\left(1+\frac{1}{h}\right)^{h}=e






個人的にはなんか感動的です。

説明しきった感がちょっとあります。

この感動を理解していただけるとだいぶ嬉しいです。





でもまあ、これだけじゃなんか微妙な話ですよね。

このままじゃ、正直よく分からんです。

使い方ははっきりしても、どういう数なのかが分かりません。




そもそもなぜ一致するのかも謎のままです。

偶然で片づけるにはできすぎてます。なんかあるはず。

その謎が分からないままってのは、嫌ですよね。



はい。この感じが、『必要条件』しか見ていない弊害になります。

というわけで、最後に『十分条件』を見ていきましょうか。






テイラー展開による近似


というわけで、満を持して『テイラー級数』の出番となります。

こいつは『微分可能』で『連続』な関数の全てに適用可能なやつです。




証明は長くなりすぎるんで、重要な部分だけざっと解説します。

↓みたいな流れで証明できるんで、確認してみてください。



まず言っておきますと、知らない人は分かんないと思います。

とりあえず必要なものがなんなのか、名前だけ挙げてく感じなので。






まず必要な操作は当然のように『極限』です。

使う定義は『微分可能』やら『連続』やら『有界』やら。

基礎は『幾何学』的性質になります。(被覆やら集積点やら)



そんで、

『テイラーの定理』は『ロピタルの定理』で証明可能です。

そして『ロピタルの定理』は『平均値の定理』で証明可能です。




更に更に『平均値の定理』は『ロールの定理』で証明可能。

それには『最大値最小値の定理』の証明が必要で、

そこには『有界』やら『区間』やらが。



そしてこれらのために『極限』が必要で、

その基礎付けとして『幾何学』的な性質が、とこんな感じです。




そして最後に『極限』を、

『集合論的に理解する』ために『極限集合』が必要に。

そして更に『極限集合』を理解するために『冠頭標準形』をををおお…




と、ちょっとキリが無いので、概要だけ。






んでは話を戻して、オイラー数を見ていきましょう。



まず確認をしておきます。

細かい部分は省略して「点 a 周りのテイラー級数」は↓です。



\displaystyle f(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n



これは、ざっと言うと『関数を作ってます』。

どう作ってるかというと『無数の接線(ほぼ点)をかき集めて』。



もうちょっと具体的なやり方の感じとしては、

『点 a の接線とその接線と、みたいにして接線を集める』のを、

「原点から a だけ離して」やってる、みたいな感じですね。






まあ、ぶっちゃけどこでも良いんで、

一番すっきりする「原点周り x=0 」を採用しましょう。

この時は「マクローリン展開」と言います。

(点 0 周りのテイラー展開)




\displaystyle \frac{d}{dx}e^x=\lim_{h \to 0}\frac{e^{x+h}-e^x}{h}=\lim_{h \to 0}e^x\frac{e^{h}-1}{h}=e^x



↑の定義から、微分操作に関してこれは明らかで、

これをマクローリン展開すると↓みたいになります。



\displaystyle e^x=e^0x^0+\frac{1}{1!}e^0x^1+\frac{1}{2!}e^0x^2+\frac{1}{3!}e^0x^3+\frac{1}{4!}e^0x^4+…

\displaystyle =1+x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{4!}x^4+\frac{1}{5!}x^5+…




ここまで、全て定義しか使っていません。

なので「オイラー数 e 」も、これから求められます。




具体的には「 x=1 」とするだけですね。

そうしたら↓になります。



\displaystyle e=1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+\frac{1}{5!}+\frac{1}{6!}+\frac{1}{7!}+…




つまりこれで「 f(x)=e^x 」と「 e の定義」

\displaystyle \lim_{h \to 0}\frac{e^{h}-1}{h}=1

だけで、「オイラー数 e 」を定めることができました。






これは「テイラー展開」により『十分性』を得た形になります。

順序としては↑が先に来て↓が使えるという感じ。



\displaystyle e=\lim_{n \to \infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^{n}



ただ「発想」の元となったものは「必要条件」が先に来ます。

これから↑に発想が導かれたわけです。ややこしいですね。





これで分かったと思いますが「連続複利」は偶然の産物です。

そういうルールで式を組んでたら、たまたまああなった感じ。

ただ「指数を使う」という点で、必然的に結びついたわけですね。






まとめると、

はっきりとした源流を辿ると「テイラー展開」がそれになります。

ただ↑のように「発想の源流」は『指数関数の微分』です。



連続複利は「定義上の必然」から導かれた『結果論』になります。

定義は「シンプル」な上に、「指数を使う」ので。



これが、大雑把に調べて遡れる限界ですかね。






以上、すごく長くなりましたが「オイラー数の定義」になります。

最後に、この「意味」について見ていきましょう。




この『意味』についても、虚数単位と似たような感じです。

後付けではありますが、この数には明確な意味があります。

それは『テイラー級数』によって与えられる「意味」です。






「テイラー級数」は、あらゆる関数を『高次方程式』に変換できます。

そしてその形成過程には、必ず『微分』を使うわけです。



もう一度確認しましょう。



\displaystyle f(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n=f(a)+f´(a)(x-a)+\frac{1}{2!}f´´(a)(x-a)^2+…



これが、テイラー級数です。

見ての通り、何度も何度も「微分」しています。




さて、とりあえず以上を踏まえて結論から行きましょう。



このオイラー数の「意味」とは、

どれだけ微分しても変わらない関数を考えることができる

というものになります。




基本的にはそのままです。

やれていることを、単に「意味」としてるだけではあります。




ただ、このような関数はこれ以外には考えられません。

あくまで『テイラー級数』では、という制約がつきますが。



実際、そのような『何回微分しても変化しない関数』は、



f(x)=f´(x)


性質がそうなので必ず↑になりますから、

「テイラー展開」すると↓になります。



\displaystyle f(x)=f(a)+f(a)(x-a)+\frac{1}{2!}f(a)(x-a)^2+\frac{1}{3!}f(a)(x-a)^3+…

\displaystyle =f(a)\left[1+(x-a)+\frac{1}{2!}(x-a)^2+\frac{1}{3!}(x-a)^3+…\right]


\displaystyle ∴f(x)=f(a)\,e^{x-a}



これから分かる通り「 f(a) の値に関係なく」、

必ず『 e に関係したもの』が出てくるわけです。




以上を以って、十分性もまた示されるわけで、

この「オイラー数」は『微分しても変わらないもの』を作れる、と。

まあ、そういう「意味」を持てるわけですね。