|| 天井もしくは地面みたいな
要は「範囲が決まってる」って感じでしょうか。
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目次
・有界「枠があるというような感じ」
上界「順序の上の方に天井がある感じ」
下界「順序の下の方に床がある感じ」
・全域的極値「その区間での端っこ」
最大値「上の方の端っこにあるもの」
最小値「下の方の端っこにあるもの」
上限「上界にあるもので一番区間に近いやつ」
下限「下界にあるもので最も区間に近いやつ」
・極値「ある区間の更に限定された場所での一番」
極大値「ある場所で更に限定された上での一番大きいの」
極小値「ある区間の限定された場所で一番小さいの」
・まとめ
・整列集合との関連「実数の開区間から無理だと分かる」
これには「上下」が定まってるので『順序集合』上の概念です。
順序集合っていうのは『順序』が定義された「集合」のこと。
『順序集合』が分からなくても↓はなんとなく分かりますが、
厳密な意味は掴みにくいかもしれません。
さて『有界』ですが、字面的には「境界が有る」みたいな、
なんかそんな感じの意味にとれなくもないようなそうでもないような。
ともかくまあ、そんな感じですよね。
んでまあ、そんなで合ってます。
なぜなら『順序』があるということはそういうことだからです。
上や下があるなら、一番下や一番上が考えられるでしょう。
直観的にはそんな感じです。
なので上と下、両方あります。
用語としては『上界』と『下界』ですね。見ていきましょう。
説明のために量化記号を使います。
これ使ってると便利なんで、みんな慣れましょう。
意訳もいれるんで、知らなくても雰囲気は分かるかと。
ともかく説明に必要なものををまず用意しましょう。
とりあえずは『順序集合となる集合 S_{ord} 』と『順序関係 ≤ 』を。
『順序集合の部分集合 S_{ord_{pt}} 』があればいいでしょうか。
これの『要素 e 』も念のため用意しときます。
ただの記号の確認です。
ともかく、↓で使う記号は↑みたいな意味ってことにします。
右下のは基本的にその集合やら要素やらの『意味』『識別』で。
上界 Upper Bound
|| 天井の上、全部のこと
要は「一番上になるもの」のことです。
別の言い方だと「上に有界である」「上から抑えられる」とか。
ともかく形式を見ていきましょうか。
単に性質を記述しただけなので、難しく考えないように。
『順序集合 (S_{ord},≤) 』の要素が「上界」だっていうのは、
その『要素 e_{bound} 』が↓を満たしてるってことです。
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∃e_{bound}}∈S_{ord}\,(e\textcolor{pink}{≤e_{bound}})\,]
意訳すると「全部の e 以上にでっかい e_{bound} があるよ」です。
基本的に一個だけじゃないってとこに注意してください。
こんな風な「 e_{bound} 」を、
『部分集合 S_{ord_{pt}} の上界』って言って良いでしょう。
ここで重要なのが『部分集合』を考えるってとこですね。
これは初めのなにかしら、ベースとなる集合があって考えられます。
基本的に「区間の端っこ」しか、区間と上界は一致し得ません。
つまり『全体』の「区間の外のでかい部分」が、上界なわけです。
『有界』っていうのは、あくまでその上で考えられるわけです。
下界 Lower Bound
|| 床の下、全部のこと
『上界』とは双対になるんで、さくっと済ませます。
・別の言い方
「下に有界」「下から抑えられる bounded below 」
・形式的な定義
部分集合の『下界』であるとは、↓を満たす場合です。
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∃e_{bound}}∈S_{ord}\,(\textcolor{skyblue}{e_{bound}≤}e)\,]
この二つを満たす場合、
つまり「上界」があって「下界」もある場合、
単に、「有界である」と言ったりします。
この辺ちょっと混乱しますが、
「有界」とだけ言われたら、それは上も下もと思って良いです。
違うって言われたら、それは単なる著者のミスでしょう。
全域的極値 Extremum
|| 極ってなんかパワーある
その中(部分集合)で一番でっかい(小さい)やつのこと。
『有界』は部分集合の「外側」から持ってくるのに対して、
こっちは部分集合の「内側」から見つけます。
こいつは一個しかないです。
最大元 Maximum
|| 一番でかいやつ
部分集合のなかで一番大きな「元(要素)」のことです。
『上界の最小元(上限)』と一致します。
つまり形式的には、
「 e_{max} 」が『部分集合 S_{ord_{pt}} の最大元』なら、
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∃e_{max}}∈S_{ord_{pt}}\,(e\textcolor{pink}{≤e_{max}})\,]
これを短くまとめて「 \max\,(S_{ord_{pt}}) 」と表したりします。
これは「最大元」の形式的な言い回しです。
単なる記号ですが、よく見るのはこれ。
最小元 Minimum
|| 一番小さい奴
双対なんで省略。
形式は「 e_{min} 」が最小元なら↓を満たします。
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∃e_{min}}∈S_{ord_{pt}}\,(\textcolor{skyblue}{e_{min}≤}e)\,]
最小元のことを略して書くと「 \min\,(S_{ord_{pt}}) 」です。
上限 Supremum
|| 中身じゃない、蓋みたいなもの
これは『上界の最小元』です。
例えば開集合「 (l,r) 」の端点「 r 」のことを指します。
最大元や最小元は「部分集合 S_{ord_{pt}} 」から持ってきますが、
これは元(Original)の集合「 S_{ord} 」から持ってきます。
つまり形式的には、
『 e_{sup} 』が「部分集合 S_{ord_{pt}} 」の「上限」なら、
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∃e_{sup}}∈\textcolor{#a869be}{S_{ord}}\,(e\textcolor{pink}{≤e_{sup}})\,]
(一番でかい宣言)
これに「上界の集合」で最小元だという条件を加えたもの↓
「上界の集合を S_{bound^{up}} 」とすると、
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∀e_{bound}∈S_{bound^{up}}}
\textcolor{pink}{∃e_{sup}}∈\textcolor{#a869be}{S_{ord}}\,[\,(e\textcolor{pink}{≤e_{sup}})\,∧\,(\textcolor{pink}{e_{sup}}\textcolor{skyblue}{≤e_{bound}})\,]\,]
こんな上限は「 \sup\,(S_{ord_{pt}}) 」みたいに書かれたりします。
下限 Infimum
|| 中身じゃない、容器の底みたいな
『下界の最大元』です。
形式は「部分集合」の「下限」なら↓を満たします。
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∀e_{bound}∈S_{bound^{low}}}
\textcolor{skyblue}{∃e_{inf}}∈\textcolor{#a869be}{S_{ord}}\,[\,(\textcolor{skyblue}{e_{inf}≤}e)\,∧\,(\textcolor{pink}{e_{bound}≤}\textcolor{skyblue}{e_{inf}})\,]\,]
「 \inf\,(S_{ord_{pt}}) 」みたいに書かれます。
極値 Extremal
|| 全域がとれたやつ
範囲に「制限」を受けた「全域極値 Extremum」のことです。
学校でやった「3次関数」とかのあれで良いです。
あれは、『極大値』も「最大値」になり得たでしょう。
つまりはまあ、そんなところです。
その『極大値』ですが、なんか一部を切り取った感じでしたよね。
つまりはそういうことで、あの「一部分での最大値」のことを、
『制限』を受けた最大値として、別の言い方をしているわけです。
極大元 Maximal
そこでなら自分よりでかいやつはいねえぜ!(お山の大将)なやつ。
最大値との違いは「制限」を受けてるかいないかだけです。
極小元 Minimal
これも「極大元」の説明とほぼ一緒です。
「最小元」との違いは『制限』を受けているかどうかだけ。
これで有界に関する基本的なことは紹介し終えました。
最後にまとめます。
まとめ
ひとまずの条件として、
『部分集合 S_{ord_{pt}} 』が『有界』であること。
「上界・下界」が満たす条件の定義は↓
上に有界
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∃e_{bound}}∈S_{ord}\,(e\textcolor{pink}{≤e_{bound}})\,]
下に有界
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∃e_{bound}}∈S_{ord}\,(\textcolor{skyblue}{e_{bound}≤}e)\,]
「最大元・最小元」が満たす条件の定義は↓
最大元
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∃e_{max}}∈S_{ord_{pt}}\,(e\textcolor{pink}{≤e_{max}})\,]
最小元
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∃e_{min}}∈S_{ord_{pt}}\,(\textcolor{skyblue}{e_{min}≤}e)\,]
「上限・下限」が満たす条件の定義は↓
上限
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{skyblue}{∀e_{bound}∈S_{bound^{up}}}
\textcolor{pink}{∃e_{sup}}∈\textcolor{#a869be}{S_{ord}}\,[\,(e\textcolor{pink}{≤e_{sup}})\,∧\,(\textcolor{pink}{e_{sup}}\textcolor{skyblue}{≤e_{bound}})\,]\,]
下限
∀e∈S_{ord_{pt}}\,[\,\textcolor{pink}{∀e_{bound}∈S_{bound^{low}}}
\textcolor{skyblue}{∃e_{inf}}∈\textcolor{#a869be}{S_{ord}}\,[\,(\textcolor{skyblue}{e_{inf}≤}e)\,∧\,(\textcolor{pink}{e_{bound}≤}\textcolor{skyblue}{e_{inf}})\,]\,]
「極大元・極小元」が満たす条件の定義は↓
極大元
制限を受けた場合の最大元
極小元
制限を受けた場合の最小元
↑を見て分かる通り、
「上限・下限」は「最大元・最小元」と一致する可能性があります。
その条件は「部分集合が最大元・最小元」を持つことです。
つまり↓のことが導けます。
逆は成立しません。
[\,\max\,(S_{ord_{pt}})=e_{max}\,]⇒[\,\sup\,(S_{ord_{pt}})=e_{max}\,]
[\,\min\,(S_{ord_{pt}})=e_{min}\,]⇒[\,\inf\,(S_{ord_{pt}})=e_{min}\,]
『整列集合』との関連
なぜ「実数」で『整列集合』を作れないのか
これに関しては、「開区間」が関わってきます。
「整列集合」の詳細については別の記事で。
結論からさらっと行きましょう。
実数が「整列集合」とならなくなる原因は、
『部分集合もまた最小元を持つ』という条件があるからです。
それだけの、至極単純な話になります。
例えば、
実数の部分集合を「開集合 (l,r) 」で取ってみましょう。
こうすると、この「部分集合(開集合)」は「最小元」を持ちません。
そして「部分集合が最小元を持たない」となれば、
「整列集合の条件を満たしていない」ことになります。
これは「大小比較」ではどんな風にやってもできてしまう問題です。
なので実数は「大小比較関係」では「整列集合」にはなれません。
ZFC では、一応できるにはできるんですけど。