|| 集合論から得られた数学の公理
『集合論』を基礎に得られた「成果」のこと。
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あらゆる『数学』の知識は、これに正しさを保証されてます。
そしてこれらは、どれも「正しいと言わざるを得ない」ものです。
目次
・同一律「それがそれ自身だっていう保証」
・定義の一意性
外延性の公理「中身が同じなら同じもの」
内包性の公理「条件を使って集合が作れる」
・性質の保証
基礎の公理「下地がちゃんとある」
無限公理「有限じゃない集合がある」
・操作の保証
置換公理「集合から別の集合が作れる」
和集合の公理「全体みたいな集合がある」
対の公理「ペアリングできる」
冪集合の公理「部分集合を全部集めた集合がある」
・選択とその限界
到達不能基数「中身が分かるサイズの限界」
選択公理「選んだものだけで集合が作れる」
・空集合の存在「要素を持たない集合の存在」
・基本操作
積集合「共通部分になる集合」
必要な知識
それを表す形式的表現として『量化記号』が使われます。
そして上から抑える概念として『基数』も知っておきたいです。
集合の存在公理 \mathrm{Identity}
|| これがないとはじまらない
いわゆる『同一律』です。
∃S\,[\,S=S\,]
なにかがそれ自身だっていう保証ですね。
当たり前すぎて語ることは特にありません。
外延性公理 \mathrm{Extension}
|| 定義のやり方その 1
いわゆる「外延的記法」の下地になるやつです。
∀S_X∀S_Y\,(\textcolor{skyblue}{∀e}\,[\,(e∈S_X)⇔(e∈S_Y)\,]⇒[\,\textcolor{skyblue}{S_X=S_Y}\,])
意訳すると「中身が一緒なら同じ」って言ってます。
具体的には『 \{1,2,3\}=\{2,1,3\}=\{1,1,2,3,3\} 』です。
順番が意味を持つ場合、要素は順番とセットのペアになります。
例えば『 \{(1,2),(2,1),(3,3)\} 』みたいに。
なので↑の書き方だと順番は特に決まってません。
内包性公理 \mathrm{Intension}
|| 定義のやり方その 2
いわゆる「内包的記法」についてのルールです。
具体的には「 S_{\mathrm{intension}}=\{e∈S\,|\,φ(e)\} 」みたいな。
論理式の有限の列「 φ=(w_1,w_2,...,w_n) 」から、
論理式(条件)を満たす『要素』が得られます。
論理式の中身っていうのは、具体的には、
例えば「 e∉S 」とか「 e∈A∧e∈B 」とかです。
つまりは『命題の解釈』から、論理式を正しいとして、
その条件に合う『要素 e∈w 』を得たい感じです。
見た感じ分かる通り、ここで『整論理式 Well-formed Formula』は、
「条件を満たす要素」を持った『集合』とみなせます。
すると↓みたいに「内包性の公理」を書けます。
∀S_d∀w_1,...,w_n\,[\,\textcolor{skyblue}{∃S}\,∀e\,[\,(e∈S)⇔(\textcolor{skyblue}{e∈S_d∧φ})\,]\,]
省略してますが『 e∈S_d∧φ 』は↓です。
(e∈S_d)∧(e∈w_1)∧(e∈w_2)∧…∧(e∈w_n)
具体例を見てみましょう。
「区間」なんかは馴染みがあるかもしれません。
こんな『 \{n∈N\,|\,1≤n<10\} 』です。
ここでの『論理式 φ 』は、「 1≤n<10 」になります。
数学では、この『論理式』は「一階述語論理」の中のものです。
ですから基本的には論理記号やら非論理記号での形式になります。
例えば「 P(x)∧Q(x) 」とか「 α∈ON 」とか。
正則性公理 \mathrm{Foundation}
|| 基礎
別名「基礎の公理」とも言われます。整礎的とも。
要は下地がちゃんとあるっていう保証です。
『無限降下列 S_1∋…∋S_n∋… は存在しない』とか、
『 S∈S ってなる集合は存在しない』がメイン。
無限降下列があると『 s∈S 』の「 S を上」とすると、
ずっと下( ∈ の左側)になる「一番下」が無くなっちゃいます。
これじゃなにで出来てるのか分からなくなってしまうんで、ダメ。
そして『 S∈S 』は集合じゃなくてクラスになります。
同じように「循環してしまう S∈s∈S 」みたいなのもダメ
これを表すと↓みたいになります。
\textcolor{skyblue}{∀S}\,([\,S≠∅\,]⇒\textcolor{skyblue}{∃s}\,[\,(s∈S)∧\textcolor{skyblue}{¬(∃e_c\,(e_c∈S∧e_c∈s)})\,])
「『共通する要素 e_c 』が存在しない、
そんな条件を満たす『集合』が存在する」がメイン。
書き換えると『 \textcolor{skyblue}{∀S≠∅}\,[\,\textcolor{skyblue}{∃s∈S\,[\,s∩S=∅\,]}\,] 』です。
『共通する要素を持たない下の集合の存在』を保証してます。
この集合の存在から「要素の 1 つ」に着目するので、
この条件に当てはまる集合を下に辿っていくと、
最終的に『空集合』に行き着きます。
具体的に見てみましょう。
そのために『集合 N=\{0,1,2,3,4,...\} 』を用意します。
更に、この『数』の構成は「比較確実性」を満たす集合とします。
つまり『 \mathrm{Suc}(n)=n∪\{n\} 』。
そして『数 0:=\{\}=∅(∈N) 』と定義していると、
この集合 0 は『要素が無い』状態になります。
そして定義から、要素が無いわけですから『 N∩∅=∅ 』なので、
当然の話、『 0∩N=∅ 』です。
これは「 0∩1 」でもまた同様。
なぜなら「 1:=\{∅,\{∅\}\} 」ですから、
きちんと「集合 0:=∅ 」が存在してます。
これの重要な点は「存在する」という部分です。
そして、全ての集合でこれは保証されています。
ですから、このように存在が保証されていることから、
下へ行けばいつかは必ず「一番下」に行き着くことになります。
それもそのはずで『 s=∅ 』はOKですから、
仮に「 s=∅ 」なら、必ず『 S∩s=∅ 』です。
他のはこれをおっきくしただけ。
そしてこれは、そのような集合が必ず存在するという保証から、
『 S=∅ 』になるまで続けられるわけです。
要は「整礎的」ってことを言ってる感じ。
これで↑の矛盾を生むものが解消されることになります。
無限公理 \mathrm{Infinity}
|| 限りが無い集合がありますよ
一般形は「原子帰納的関数」の一種の、
「後者関数 Successor Function」で表されます。
しかしこれだとなんかよく分かりにくいので、
より具体的な「無限公理」を先に紹介します。
一つは↓です。
∃S\,[\,(∅∈S)∧(∀e∈S\,(\textcolor{skyblue}{e∪\{e\}∈S)})\,]
これは『後者関数 \mathrm{Suc}(e)=e∪\{e\} 』の時のものになります。
∅∈S から始まって、後者の定義から、
∅∪\{∅\}∈S の存在が確定して、また後者の定義から、
∅∪\{∅\}∪\{∅∪\{∅\}\}∈S が、と延々処理が続くことになります。
「後者関数 \mathrm{Suc}(e) 」を使った一般形は↓です。
∃S\,[\,(∅∈S)∧(∀e∈S\,(\textcolor{skyblue}{\mathrm{Suc}(e)∈S)})\,]
これは『無限』に大きな集合の存在を保証してますが、
その保証のやり方は結構乱暴です。
例えば↑で示した「公理」が存在を保証する集合は、
『有限だと矛盾する集合』になります。
つまりは『有限じゃないから』無限だって言ってるわけです。
それにこれ、見覚えがあると思います。
はい、これは「自然数」や「順序数」の構成方法の一つです。
連中が無限に存在することの保証はこれでされてます。
実際、この操作を「有限」回で終えると一致しなくなります。
それもそのはずで、定義で『後者 \mathrm{Suc}(e)∈S 』です。
となると、有限で止めると『後者』が抜け落ちてしまいます。
簡単に確認してみましょう。
有限になる時の最大の集合(仮定)を『 S_{\mathrm{lim}} 』とします。
後者は『 \mathrm{Suc}(e)=e∪\{e\} 』にしましょうか。
すると、これは定義通りなら『 S_{\mathrm{lim}}∪\{S_{\mathrm{lim}}\}∈S_{\mathrm{suc}} 』があります。
しかし『 S_{\mathrm{lim}}∪\{S_{\mathrm{lim}}\}∉S_{\mathrm{lim}} 』は確実です。
つまりは定義で保証された集合より『 S_{\mathrm{lim}} 』は小さくなります。
そんなわけで最大(仮定)な有限集合は最大じゃなくなりました。
つまり矛盾ですから、有限になるのはアウトというわけですね。
つまりはそういうことです。
要は後出しOKという感じ。
この公理を認めるなら、保証された集合は、
『どんなに大きな有限集合より大きくなってしまう』ことになります。
これを踏まえた上でまとめると、
要するに「人間に理解できる」『無限の本質』は、
後付けできる『後者』にある、という感じ。
例えば「一番でかい数」を仮定しても、
それ「プラス 1 」の方がでかいよね?って具合に。
置換公理 \mathrm{Permutation}
|| 置き換え
要は『写像』の「像」があるよと言ってます。
「像」はあれです。定義域と写像からできる「集合」のことです。
要は「 y=f(x) 」を表したい感じで、
この f は『直積集合』として定義されてます。
定義されてるんで、ただの決まりです。
基本的に 2 ブロックで形式化されてます。
ここでは『論理式 f_{\mathrm{wf}}(x,y) 』を使って形式化。
要は、論理式の中身を意訳すると、
「 x を y へ、こう置き換える」となるなので、
これを「直積集合 f_{\mathrm{wf}}(x,y):=X×Y 」で実現する感じ。
ちなみに直積集合 S_A×S_B の定義は↓です。
S_A×S_B:=\{(a,b)\,|\,a∈S_A∧b∈S_B\}
準備ができたので、さっそく形式化をしてみましょう。
まずは、写像(論理式)の一意性ですね。
論理式の具体例を『 f_{\mathrm{wf}}:S_{\mathrm{dom}}→S_{\mathrm{img}} 』とすると、
∀S_{\mathrm{dom}}∀S_{\mathrm{img}_A}∀S_{\mathrm{img}_B}
[\,(f_{\mathrm{wf}}(S_{\mathrm{dom}},S_{\mathrm{img}_A})∧f_{\mathrm{wf}}(S_{\mathrm{dom}},S_{\mathrm{img}_B}))⇒(\textcolor{skyblue}{S_{\mathrm{img}_A}=S_{\mathrm{img}_B}})\,]
そういう「写像の像(集合)」は一個しかないって言ってます。
同じ『写像と定義域』から「複数の像」が得られるのは変でしょう。
例えば「 y=f(x) 」と「 z=f(x) 」は、
記号は違っても、『 y=z 』にならないと変です。
んで、↑が成立する『なら』↓が成立します。
∀S_{\mathrm{dom}}\textcolor{skyblue}{∃S_{\mathrm{img}}}∀f(e)
[\,(\textcolor{skyblue}{f(e)∈S_{\mathrm{img}}})⇔(e∈S_{\mathrm{dom}}\,[\,\textcolor{skyblue}{f_{\mathrm{wf}}(e,f(e))}\,])\,]
これは『値域・像』があるよっていう宣言ですね。
↑ので一意性を確保して、これで存在を保証してます。
唯一存在記号を使ってまとめると↓
∀S_{\mathrm{dom}}\,[\,(\mathrm{Unique})⇒(\mathrm{Permutation})\,]
\mathrm{Unique}:=
e∈S_{\mathrm{dom}}\,(∃!f(e)\,[\,f_{\mathrm{wf}}(e,f(e))\,])
\mathrm{Permutation}:=
\textcolor{skyblue}{∃S_{\mathrm{img}}}∀f(e)\,[\,(\textcolor{skyblue}{f(e)∈S_{\mathrm{img}}})⇔(e∈S_{\mathrm{dom}}\,[\,\textcolor{skyblue}{f_{\mathrm{wf}}(e,f(e))}\,])\,]
集合から得た「集合(値域・像) f(e)∈S_{\mathrm{img}} 」が存在する。
意訳すると「像の集まり」も集合になる。
この主張がミソ。
見易さ重視で『論理式 f_{\mathrm{wf}} 』を「写像」のように表していますが、
一般形はきっちり『論理式(直積集合)』です。
写像に限定してません。
なので「 f(e) 」って書いてますけど、
これは別に『変数 e 』からの「像の要素」に限定されてないです。
単に見やすいようにしただけなんで、他の文字に置き換えてOK。
それと『論理式』は内包性の公理から『集合』にできます。
なので『論理式』は『像』として見ても特に問題はありません。
ですから「写像」として見立てても大丈夫です。
具体例を見てみましょう。
「定義域 S=\{1,2,3\} 」と「写像 f 」から、
一意に「写像」を『 1↦2,2↦3 』みたいに決めると、
外延性の公理から『像 f(S)=\{2,3\} 』は一個しかできませんよね。
要はこれを保証してるだけです。
それを一般的にすると↑みたいにごちゃってなります。
和集合公理 \mathrm{Union}
|| 全部
集合と、それとは別の集合の『要素全部を持った集合』の保証。
ある集合があって『それを分割できる』ことも保証してます。
字面通りの意味です。
『和がある』なら、その『分割したものがある』って感じ。
同時に『分割したものがある』なら『分割されたものがある』とも。
記号は『 ∪ 』が使われてます。
要は「候補 Candidate 」となる集合があって、
それらの「要素の全て」を持った集合があるっていってます。
その言い換えとして、ある集合がある上で、
それをいくつかの「候補」に『分解できる』とも。
∀U\textcolor{skyblue}{∃S_U}∀e\,[\,(\textcolor{skyblue}{e∈S_U})⇔\textcolor{skyblue}{∃S_{\mathrm{cnd}}}\,(\textcolor{skyblue}{e∈S_{\mathrm{cnd}}}∧S_{\mathrm{cnd}}∈U)\,]
具体例を見るとわかりやすいです。
上の『全体になる集合族 U 』を「 \{S_A,S_B\} 」とします。
そこで「 e_A∈S_A,e_B∈S_B 」としましょう。
すると、ここで保証される集合は↓のようなものになります。
『 e_A,e_B∈S_U 』ですから『 S_U=S_A∪S_B 』です。
なぜかというと『 ∀e∈S_U 』なので、
『 e_A,e_B 』は「 e 」の取れる要素の一部になるからです。
対公理 \mathrm{Pair}
|| ペア
要は「 x と y から (x,y) っていうペアを作る」って感じ。
つまりは「要素」のセットから、新しい『要素』を作るわけです。
形式は単純で↓みたいな感じ。
∀e_1∀e_2\textcolor{skyblue}{∃S_{\mathrm{pair}}}\,[\,\textcolor{skyblue}{(e_1∈S_{\mathrm{pair}})∧(e_2∈S_{\mathrm{pair}})}\,]
要は『 2 つの要素で集合を作れる』っていう保証です。
これによって保証されている「集合 S_{\mathrm{pair}} 」は、
『 S_{\mathrm{pair}}=\{e_1,e_2\} 』みたいな集合になります。
これはこんだけですが、注意点がいくつか。
例えば、同じ要素『 \{e,e\} 』なら、
外延性の公理から「 \{e\} 」になります。
なぜなら『 ∀e\,[\,e∈\{e\}\,] 』で『 ∀e\,[\,e∈\{e,e\}\,] 』なので。
これを使って作ることができる、
『順序対』に関しては、定義になります。
ただこれについては、無限公理と同じように、
あくまで一つのやり方があるという感じ。
良く使われる「順序対」の構成は↓の形式になります。
これは「包含関係 ⊂ 」で順序を定義。
(e_1,e_2):=\{\{e_1\},\{e_1,e_2\}\}
これは↑のときのように、同じ『 e_1=e_2 』なら、
(e,e)=\{\{e\},\{e,e\}\}=\{\{e\},\{e\}\}=\{\{e\}\}
冪集合公理 \mathrm{Power Set}
|| パゥワー
ある「集合」の『部分集合』を『全部』集めた集合があるよ、
みたいなことを保証してます。
形式的には↓みたいな感じです。
∀S\textcolor{skyblue}{∃2^S}\,[\,∀S_{\mathrm{pt}}\,[\,(S_{\mathrm{pt}}⊆S)⇒\textcolor{skyblue}{(S_{\mathrm{pt}}∈2^S)}\,]\,]
具体例を見ましょう。
たぶんそれが一番わかりやすいです。
集合『 S=\{1,3,5\} 』をとりあえず用意します。
するとこれの「冪集合 2^S 」は↓みたいになります。
\displaystyle 2^S=\{∅,\{1\},\{3\},\{5\},\{1,3\},\{1,5\},\{3,5\},\{1,3,5\}\}
『空集合 ∅ 』は単に定義として、
全ての集合が「部分集合に含む」ことになってます。
はい、というわけで冪集合はこんな感じです。
要素が「部分『集合』」という点には注意しておきましょう。
ここまでを『 ZF 』と言います。
これは公理の名前です。由来は人命「 Zermelo Fraenkel 」。
到達不能基数 \mathrm{Inaccessible\,Cardinal}
|| 基礎が保証される限界
要は↑の操作で作れる大きさの限界になります。
詳細は『到達不能基数』の別の記事で。
結論だけを述べるなら、
↓の条件を満たす『基数 κ_{\mathrm{inacs}} 』のことです。
『正則』であり、かつ、
『非可算』な『極限基数 κ 』で、
∀κ\textcolor{pink}{∃κ_{\mathrm{inacs}}}\,[\,\textcolor{pink}{2^{κ}<κ_{\mathrm{inacs}}}\,]
選択公理 \mathrm{Choice}
|| 選んだもので作る
要は『いろんな集合から要素を 1 つ選んで』、
その「選んだ要素から集合を作れる」ということの保証です。
1つである理由は「単位として考えたい」からになります。
要は「1つ選ぶ」を何度も繰り返せば、
「 n 個選ぶ」を実現できる感じ。
具体例だと「集合 S_A=\{1,2,3\},S_B=\{m,n\} 」があって、
選択公理が存在を保証する集合『 S_c=\{2,m\} 』がある
というような感じ。
他にも自然数を作りたいなら、例えば、
集合族 \{\{0\},\{1\},\{2\},\{3\},...,\{n\},...\} から、
\{0,1,2,3,4,5,...n,...\} が得られるよ、っていう感じ。
厳密にはどんな操作かというと、↓
『集合族(集合が要素の集合)』の要素(集合)から、
好きなように「集合の要素 1 個」を選んで、新しい『集合』を作る。
ちょっとややこしいんで記号で書くと↓みたいな。
『集合族 G 』として、
『集合 S 』として、その『要素 e 』を考えます。
つまり『 e∈S∈G 』ってこと。
そして、ここで『空ではない集合 S_i 』を考えます。
これは空ではないので『要素 e_i 』を持つとします。
これより『選択公理』で保証される集合は↓になるわけです。
S_{\mathrm{choice}}=\{e_1,e_2,e_3,...\}
要は『集合から 1 つずつ』が本命になります。
ですから『 S_{\mathrm{choice}} 』は↑みたいになるわけです。
この時点でもちょっとややこしいですが、
形式的な命題、公理はもっと直観的に分かりにくくなります。
ただ、要は↑のことを書いたやつです。
けっこう長いですけど、↑をやりたいってことをただ宣言するだけ。
というわけで、そんな長くて分かり難い論理式を、
いっそ分割して見てみることにしましょうか。
先に大雑把な形式を紹介しておくと、要は↓みたいな感じ。
よく分からんと思いますが、ほんとにこんな感じです。
『空集合じゃなくて、違う集合同士は共通部分を持たない』(前提)
なら、『集合から一つずつ要素を取り出した集合が存在する』(結論)
ともかく、まず『集合族 G 』があって、
その「要素 S 」があるとします。当然の宣言です。
そして、これらの持ってる性質がとりあえず書かれます。2 つ。
ここまでが『前提』になります。
・「空集合じゃない」って宣言がまず一つ
∀G∀S∈G\,[\,S≠∅\,]
・集合と集合が「共通部分を持たない」という宣言が一つ
厳密には「異なる集合同士は、共通部分を持たない」です。
∀G∀S_X∈G∀S_Y∈G\,[\,(S_X≠S_Y)⇒(S_X∩S_Y=∅)\,]
以上の『前提』を踏まえた上で、『結論』がきます。
この意訳は『選択した結果得られる集合が存在する』です。
・「集合から一個ずつ要素を持ってきた集合がある」って言ってます。
これを言い換えると↓です。
選び先の集合 S と、
保証される集合 S_c は、
共通部分を唯 1 つだけ持つ
∃S_c∀S∈G\,[\,∃!e\,[\,e∈(S∩S_c)\,]\,]
選択公理が保証する集合は「一つずつ取り出している」ので、
「取り出された集合」と「共通部分を一つだけ持つ」ことになります。
これが選択公理です。
きちんと↑の操作を実現できていますね。
まとめると↓みたいな感じになります。
・前提
意訳すると、「空じゃない」かつ「共通部分なし」。
∀G\,\,\,∀S∈G\,[\,S≠∅\,]\,\,\,\,\,∧
∀G\,\,\,∀S_X∈G∀S_Y∈G\,[\,(S_X≠S_Y)⇒(S_X∩S_Y=∅)\,]
・結論
意訳すると、『前提』が成立する上で、
「集合と一個だけ共通部分を持つ、新たな集合が存在する」。
⇒\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,∃S_c∀S∈G\,[\,∃!e\,[\,e∈(S∩S_c)\,]\,]
余談ですが、これと「同値」となる命題がいくつかあって、
有名なのだと、 1 つは『ツォルンの補題』で、
他には『整列可能定理』とか。
空集合 \mathrm{Empty\,Set}
|| 空っぽの集合? 枠の間違いじゃ?
「要素を持たない『集合』」のことです。
そういう集合だということを押さえておく必要があります。
これは『空集合の公理』とされている場合もありますね。
これを入れる場合は「内包性の公理」と入れ替えられます。
入れ替えができるわけですから、
これは「内包性の公理」から導くことが可能です。
さっそくやってみましょう。
「同一律」によって集合の存在が確定して、
「内包性の公理」から『 S_{\mathrm{empty}}=\{e∈S\,|\,e≠e\} 』が。
「 S の要素 e 」が全て排除されて空になるので、
この『 S_{\mathrm{empty}} 』が「空集合 ∅ 」になります。
つまりこの形式は『 ∃S_{\mathrm{empty}}∀e\,[\,e∉S_{\mathrm{empty}}\,] 』です。
特に奇抜なことをするでもなく、あっさり出来上がります。
空集合の解釈
ただこれ、『 e≠e 』の部分でちょっと引っかかるんですよ。
「中身が何も無い」って考えると。
というのも、これを「中身が何も無い」として成立させるためには、
『 e≠e の判定が可能』ってことが前提になってなきゃいけません。
つまり「ドメイン S の中身」は、それに限定されてしまうわけです。
何が言いたいかと言うと、
つまり『 e≠e の判定が不可能な e を持つ集合』を考えると、
「中身が無い」という表現では、なんか変な感じになります。
この問題は「無限集合」を想定すると分かり易くて、
例えば『違いが無限に近い位置に、あるかもしれない』場合、
「違いの存在を確認できない」ので、判定ができないんです。
(大きさが約 10^{-1000}m の2つの物の違いとか)
感覚的には、見分けがつかない2つのものを考えてみてください。
その違いから、本物を見分けようと思った時、
さて、それは可能でしょうか?
できませんよね。
そもそも『どっちがどっちかわからない』ですから。
まあ、2つあるので、『違いは間違いなく存在する』のでしょう。
しかし、その「違いそのものが分からない」なら判定は不可能です。
とまあ、要はこんな感じの話ですね。
つまりこれ、たぶん『中身が無い』ではないんですよ。
こう考えると、↑みたいな問題が出てくるので。
じゃあなんなのかって話なんですが、
多分これ、『分かる中身が無い』なんです。
こう考えると、けっこう自然な感じに解釈できます。
どういうことかというと、
要は『存在してるのかしていないのかも分からない』って感じ。
つまり「空集合と呼ばれているものの中身」っていうのは、
『存在していると確定できるものが何も無い』のであって、
「中身が無いかどうかも分からない」状態なんです。
ですから、「中身が何も無い」と解釈するより、
『存在していると確定できるものが何も無い』と、
こう解釈するのが自然なわけですね。
ですから「空集合 \mathrm{Empty} 」というよりは、
個人的には「不定集合 \mathrm{Indefinite} 」とでも呼んだ方が、
なんか適切な感じがします。
積集合 Intersection
|| 集合と集合の共通する部分だけ
『共通部分』だけで作られた「集合」のこと。
「内包性の公理」から導けます。
まず導くために『全体集合 U 』を用意。
その上で、『集合 S_{\mathrm{inter}}∈U 』を考えましょう。
S_{\mathrm{inter}}=\{e\,|\,∀S_{\mathrm{cnd}}∈U\,[\,e∈S_{\mathrm{cnd}}\,]\}
これであっさり出来上がりです。
要は『全部の e∈S_{\mathrm{cnd}} 』を満たす「 e 」を集めたものです。
『 S_{\mathrm{cnd}} 』は候補なので、いくつかあるということになります。
「その条件を満たすものだけ」なので、これが「共通部分」です。
様々な公理
基礎的な公理的集合論である公理系『 ZF 』に、
選択公理『 Choice 』を加えたものが『 ZFC 』になります。
また、これに「一般連続体仮説 GCH 」を加えたりも。
これは『 ZFC 』とは独立になっていますので。
『実数直線』に関する「ススリンの仮説 SH 」なんてものもあります。
これも『 ZFC 』とは独立です。
ただし↑の『 GCH 』と独立かどうかは分かってないですね。