極限基数 Limit Cardinal


|| 順序数を知っておきましょう

これは『基数』を知っていることが前提のものになります。

いわば、ある『特殊な無限な基数』が『極限基数』です。

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目次


概要「極限基数の雰囲気」


順序数と基数「要素の数を表す数」

フォンノイマンの割り当て「順序数を使った基数の定義」



共終数「上に限りが無い、一番小さな部分集合」

   共終数の具体例「共終数を実際に求めてみた」



正則基数「共終数と、元になった基数とが一致」

特異基数「共終数より、元になった基数が大きい」








基数の分類も、基本的には「順序数」と似たり寄ったりです。

まあ「基数」の割り当ての方法がそもそも「順序数」基準ですし、

似てるもなにも、ほとんど同じじゃんって感じではありますが。




ともかく形式としては、

「超限基数(無限基数)」は、基本的に『 κ 』と表されます。

ですが、ここではあまり使わないことにしましょう。




そんな「基数」にも「順序数」と同じようなグレードがありまして、

まず「有限」の範囲だと「自然数」は全て基数です。

そして「最小の無限基数」は「最小の極限順序数 ω 」と一致します。




この辺り、まったく順序数と同じですね。

これと似たような流れで、基数もまた大まかに分類できます。




一つが↑にあるように「自然数」のことで、

次に「超限基数 κ=ω 」が来て、

そして『後続型基数 κ^+ 』が来ます。



要は↓みたいな感じ。

n∈ω∈ω^+\,\,\,⇒\,\,\,n<ω<ω^+




「後続型基数 κ^+ 」は、

「無限基数 κ 」よりも大きな、最小の「基数」になります。

つまり、ある「無限基数」の「次の基数」ってことですね。






そして↑では表せない、

けれど「基数」な「無限基数」のことを『極限基数』と言います。




感覚的には、「極限基数」っていうのは『例外』な感じ。

例えば有限の自然数から見た「 ω 」みたいな。







順序数と基数


通常、「基数」は『順序数』を使って表されます。

これは割り当ての方法の一つでしかないわけですが、

これがなかなか都合が良いんです。




というのも『順序数』は、ある「集合」です。

そしてそのある「集合」の『要素の個数』と一致します。



「基数」もまたサイズを表すので『要素の個数』と同じです。

これだけで『基数』と『順序数』の一致具合が分かると思います。



そしてこの一致具合から、

「基数」は『順序数』によって『定義』されることがあります。







フォン・ノイマンの割り当て


「基数」は『全単射』による判定が直感的ですが、

その他に『順序数』による割り当てもまた直観的になります。



この「順序数」を使った『基数』の解釈のことを、

『フォン・ノイマンの割り当て』と言います。




厳密には↓みたいに割り当てられてます。

記号がガチャガチャしてますが、自然数で考えると普通な感じ。



∀β\,[\,∃α\,[\,(β<α)⇒(|β|<|α|)\,]\,] なら、

card(S)=min\{α∈ON\,|\,card(S)=card(α)\}




↑の min(α) は「始順序数 Initial Ordinal 」と呼ばれたりします。

最小値にしてる理由は「無限基数」に対応するためです。



この『始順序数』を、「整列集合 S の濃度」として割り当てる。

これが、フォン・ノイマンの割り当ての形式になります。






とりあえず確認してみましょう。

「有限」であるなら、きちんと『自然数』が対応できています。



例えば「整列集合 S=\{1\} の濃度」なら「順序数 1 」が。

「整列集合 S=\{1,4,8\} の濃度」なら「順序数 3 」が。






そして問題となってくるのが、『無限濃度』の場合です。

最小値と定義している意味は、ここから分かります。



例えば最小の無限濃度『 \aleph_0 』であれば、

始順序数として『自然数全体 ω=ω_0 』が割り当てられます。

ω+1 やら ω+n 」ではなく、これが。




「無限基数」の割り当てでなにが問題になるのかというと、

↑の定義にある条件『 card(α)=card(S) 』の、

α 』の候補が「複数存在する」ことです。



しかし「全単射」で定義される基数は、

その候補から『一つに絞る』ことが、できてしまいます。




なぜなら「 ω+1 」も「 ω+n 」も、

その『要素数』は「 ω+ 有限の値」なんです。

有限である以上、サイズ的には結局「 ω 」あれば十分なわけで。






そしてこれは「 ω- 有限の値」でも同じことが言えます。




なぜなら、見かけの上では小さな、

α 」の『部分集合 α_{cf} 』を↓のようにとると、



∀e∈α\,[\,∃e_{lim}∈α_{cf}\,[\,e<e_{lim}<α\,]\,]



この濃度は『 α=ω なら |α_{cf}|=ω 』になります。



例えば「自然数全体の一部」である「 10 の倍数だけ」でも、

自然数全体との間に「全単射 10k 」はしっかりあるので。




そしてこのような「極限順序数の部分集合」を、

『共終(Cofinal)である』と言ったりします。

その中でも最小の部分集合を『共終数』と言う感じです。




まあ、感覚的には「最小」というより「最低限」って感じですけど。



なにせ「 10,20,30,... 」は確実に部分集合でありながら、

同時に「自然数全体を 10 倍したもの」でもあるわけで。



なんか感覚狂う感じですけど、一部のくせに、でかくもあるんですよ。

えーって感じですけど、確実にそうです。

無限っていうのはそんなもん。



ですから、それ以上分解しようのない『自然数』が最低限になります。

一応↑の言い方だと「最小」なわけですが。








共終数 Cofinality


|| 終端を共有してる感じ

これは『極限順序数』の上で定義されます。 ω とか。

一言で言えば、ある特別な「順序数」のことですね。 ω みたいな。




形式的には「順序数 α 」の『部分集合 α_{pt} 』が、

『非有界(上に有界じゃない) sup(α_{pt})=α 』を満たす、

『最小の部分集合 α_{pt}⊆α 』を「共終数」と言います。






↓みたいな感じです。

要するに『濃度』を表してます。



」で順序付けられている『順序数 α 』の上で、

\mathrm{cf}(α):=min\{card(α_{pt})\,|\,α_{pt}\,\,\mathrm{is\,\,unbounded}\,\}




あるいは「部分集合 α_{pt} 」が「 α 」について『共終である』とは、

『上に有界じゃない α_{pt}sup(α_{pt})=α 』を満たすということです。






これは「無限順序数」じゃないと、満たすものを見つけられません。

ちなみに『極限順序数』は「無限順序数」の一種です。




それと「有限順序数」の場合は、部分集合は必ず『有界』になります。

自然数とかでより感覚的に表すと「有限」ってことですね。

つまり「非有界」という条件がある以上、『有限』ではありません。




これの存在意義は「濃度の定義を厳密にする」ことにあります。

この定義のために『共終』があると言っても良いでしょう。

そしてその判定の基準は「正則(下地がある)」かどうかになります。






「有限順序数」の後続順序数は、間違いなく「有界」です。

要するに「自然数」のことなので。



ですから「有限」で共終を考える必要はありません。

なにより、共終を考えなくても確実に比較できます。






問題となるのは「有限」ではなく、やはり「無限」です。

「無限」からは直観が通用しなくなってくるので。



例えば『 α 』とサイズが同じ『部分集合 α_{pt}

この二つの比較とか、どうするんでしょ。

「自然数全体」と「二の倍数全体」だと、どっちも同じですけど。




どちらも『有界ではない』ですし、サイズはどちらも『 \aleph_0 』です。

しかし無限順序数の候補は、このようにすればいくらでも出てきます。




そう、このようにして「無限順序数の部分集合」をとると、

『濃度』が同じものは、いくらでもできてしまうわけです。

このままだと「順序数」を「基数」として定義できません。




ともあれ、これが「順序数」の興味深い性質になります。

そしてこれを強調している概念が「共終」なわけですね。






具体的に見てみましょう。

極限順序数 α の「共終数」を「 \mathrm{cf}(α) 」と表すと、

「順序数」が『正則』であるなら「 \mathrm{cf}(α)=α 」です。




これを満たす条件を形式的に表してみましょう。



すると「 α 」の部分集合を考えると、非有界なので、

α_{cf} が共終である」ことを満たす条件は↓になります。



∀e∈α\,[\,∃e_{lim}∈α_{cf}\,[\,e<e_{lim}<α\,]\,]




この条件からなんとなく分かると思いますが、

これは大から小へのアプローチになります。



意訳すれば、一部も上限に限りなく近づくと言ってるわけです。

つまるところ、感覚的には「極限」みたいなものですね。




「部分集合」に『非有界(上に)』という条件が入りさえすれば、

どこまでも小さな『上限が α になる順序数』を作れるわけです。




そしてその最小のものは、「濃度」が『 \aleph_0 』のときでは、

『自然数全体 ω:=\{1,2,3,4,...\} 』になります。

定義から、並べると「自然数の最後尾」にこれがくるので。






より「直感的に大きなもの」と比較してみたいなら、

有理数の濃度 \aleph_0 」と比較すれば直観的に理解できるかと。

なんだかんだと「自然数全体」が最小な気がしてきます。






では、どういう使い方をされているのか見てみましょうか。

これだけじゃ、だから?って感じなので。






基本的には、これは2つの『極限順序数』の判定に使われます。

一つが『正則』なら、条件は「 α=\mathrm{cf}(α) 」で、

一つが『特異』なら、条件は「 α>\mathrm{cf}(α) 」です。




その違いは見て分かる通りです。



『有界ではない部分集合』をとったのに、

なぜか「上限」が同じにならない。



普通「正則(基礎が明確)」なら、

どう考えても「同じになるはず」なのに。




こんな感じに、直観から外れたものを「特異」と表してます。

いわゆる「正則(直観的)」かどうかを判定する基準なわけです。




そしてなにより、『共終』であるかどうかを確認することは、

「同じ上限になるもの」として一塊にできる、(同値類)

ということでもあります。




基数はこの中から一番小さなものを抜き出すわけですし。

なにより「順序数」は『整列集合』です。

比較が確実にできるので、「最小」が求められます。







正則基数 Regular Cardinal


|| 基礎がしっかりしてる無限基数

『順序数』の割り当てなら「正則順序数」のことです。

これは「極限基数」の一種になります。




てなわけで、実際にどういうものかじっくり見てみましょうか。

まあ、どうせ毎度のごとく「自然数っぽく」考えるわけですが。






「フォン・ノイマンの割り当て」では、

『基数 \aleph_α 』は↓のように定義されています。




使うのは「アレフ数」と「順序数」の二つ。

↓は「アレフ数 \aleph 」の定義になります。




『最小の無限基数』として、

「自然数全体(最小の無限順序数)」を


\aleph_0=ω



『後者基数』として、

「後続順序数」を


\aleph_{α}^{+}=\aleph_{α+1}



そして『極限順序数』なら、

「以下の順序数を全て持ってる順序数」として


\displaystyle \aleph_{α_{lim}}=\bigcup_{α<α_{lim}}\aleph_α






これ、要は『 ω_α=\aleph_α 』って言いたい感じです。

目的は一貫して「順序数で基数を表したい」わけですから。




ちなみに添え字に使われる「 α 」は、

比較確実な順序数ですから、自然数より大きなものも扱えます。






そしてこれによる『正則基数』とは、

ω_0=\aleph_0 』や『 ω_n=\aleph_n 』などのことになります。

つまりは最小の濃度を表す「始順序数」とかいうやつのことです。




これ以外のものは、基本的に「特異基数」となります。

逆説的ですが、要するにあんま見ないやつはだいたいそうです。






特異基数 Singular Cardinal


|| ちょっとよくわからない無限基数

『特異順序数』のことですね。(特異 α>cf(α)

これも「極限基数」の一種です。




定義が「順序数」依存なので、そちらをメインに見ていきましょう。

ここでは『特異基数』と『特異順序数』は同じと思って良いです。






共終数と特異基数


形式的には『 ω_ω=\aleph_ω 』みたいなやつのことです。

これは『共終数』が『 ω 』となるので、

\mathrm{cf}(\aleph_ω)=ω=\aleph_0<\aleph_ω 』になります。




なぜなら「共終数」を求めると、

ω_ω 」の部分集合 ω_{ω_{pt}} は↓のようにとれます。

非有界なものでは『 ω_{ω_{pt}}=\{ω_n\,|\,n∈ω\} 』が。



これは『濃度 card(ω_{ω_{pt}})=ω 』がとれるので、

『共終数』は、少なくとも「 ω 」以下です。

つまり『 \mathrm{cf}(ω_ω)=ω<ω_ω 』と言えます。






ω+1:=\{0,1,2,3,...,ω\} 』も特異です。

というのも、これはそもそも「極限順序数」ではありません。

それに「 \aleph_0 の次の基数」なので「後者基数」になります。




ちなみにこの「共終数」は『最大元 ω 』の存在から、

非有界な部分集合の最小濃度は『 |\{ω\}| 』になるので、

\mathrm{cf}(ω+1)=1<ω+1 』になります。




なぜ「 \{ω\} 」が非有界かというと、

例えば「非有界な部分集合 \{n\,|\,n∈ω\} 」をとってみると、

これと「 ω:=\{n\,|\,n∈ω\} 」は同じ要素になるからです。






ω+ω 』もまた「正則」ではありません。

ただし、これは「極限順序数」です。




しかし『奇数と偶数の類別』から分かる通り、

これの濃度は『 \aleph_0 』です。

つまり「正則ではない極限基数」になります。




「共終数」に関しても『 \{ω+n\,|\,n∈ω\} 』から、

これは非有界で、しかも濃度は『 ω 』になります。

つまり「 \mathrm{cf}(ω+ω)=ω<ω+ω 」です。






このように『共終』を考えると、

「正則か否か」以外にも「順序型」というものも見つかります。

ですから、とても大事な性質なわけですね。