順序数 Ordinal Number


|| 順序がちゃんと分かる数

「順番を表す数」のこと(ほぼ自然数)

厳密には『自然数を拡張した数』のこと。

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目次

 

自然数と順序数「順番を表現する数」

   有限順序数「つまりは自然数のこと」

   無限順序数「自然数よりも大きな順序数」

 

 

・順序数の定義「推移律と三分律を満たす集合」

・順序数の帰納的定義「簡単な定義」

 

 

・順序数の種類「大体三つに分かれてる」

   後続順序数「前を持ってる順序数」

   極限順序数「無限を表現するための順序数」

 

 

 

 

 


 

これは数学の核です。

数学は『順序』を判別する役割を持っていますので

根本的に、数学は順序とは切っても切り離せません。

 

 

というのも

人間の直観に一番近い数的概念は「順序付け」です。

 

 

人間はこのために数を扱う

そう言っても過言ではありません。

こじつければたぶん全部そうですし。

 

 

そんな「順序」を表す数とくれば

まあそりゃあ大事でしょう。

むしろ大事じゃないわけないです。

 

 

 


 


順序数と自然数

 

『順序数』は「直観に根付いた数」で

「自然数」を拡張したものになります。

 

 

役割は「自然数よりも広い意味」で

「順番を表現する」こと。

 

 

とまあそんなわけですから

「自然数」が分かるならこれは直感的に理解できます。

 

 


 

 

有限順序数

 

「順序数」の中で

「自然数」はこのように呼ばれることがあります。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,\cdots,n,\cdots \end{array}

 

「有限」とあるように

『順序数』は「無限」も扱う関係上

「有限の範囲」は分けて考えられます。

 

 

「集合論」的には ↓ みたいな感じ。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&:=&\{\}&=&∅ \\ \\ 1&:=&0∪\{0\}&=&\{∅,\{∅\}\} \\ \\ 2&:=&1∪\{1\}&=&\{∅,\{∅\},\{∅,\{∅\}\}\} \\ \\ &\vdots \\ \\ n+1&:=&n∪\{n\} \end{array}

  

『大小比較』なんかの数の本質は

「帰属」や「包含」の『推移的な関係』にありますから

基本的に、集合はこのような構造で定義されます。

 

 


 

 

無限順序数

 

「有限」の範囲を抜けて『無限』へ。

この辺りから直観がちょっと怪しくなりますが

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω_0&=&\{0,1,2,3,4,5,\cdots,n,\cdots\} \end{array}

 

『自然数全体の集合』を ω_0 と置くことで

「加算無限」を表す『順序数』は ω_0 と定義されます。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle n&<&\textcolor{skyblue}{ω_0} \end{array}

 

確認しておくと

「推移律を満たす 」を「大小関係 < 」と解釈する時

この関係は明らかに成り立っていることが分かります。

 

 

 

 

 

加算無限より大きな順序数

 

無限の範囲は「加算無限」が上限ではありません。

↑ の定義から見ても分かる通り

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω+1&:=&ω∪\{ω\} \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0,1,2,3,...&<&ω&<&\textcolor{skyblue}{ω+1} \end{array}

 

「加算無限よりも大きな順序数 ω+1

こういう数を定義することは可能です。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω+(n+1)&:=&ω+n∪\{ω+n\} \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ...,ω+n,\textcolor{skyblue}{ω+(n+1)},... \end{array}

 

同様の手順でこのような数も定義できますし

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 1,2,3,...,n,...&<&ω,...,ω+n,...&<&\textcolor{skyblue}{ω+ω},ω+ω+1... \end{array}

 

これはどこまでもどこまでも定義可能。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle …&<&ω+ω,...,ω+ω+n,…&<&ω+ω+ω,...&<&\textcolor{skyblue}{n*ω},... \end{array}

 

んで、まだまだまだまだ続き続けて

どこまでもどこまでも続いていって

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ...,n*ω,...,\textcolor{skyblue}{(n+1)ω},...&<&\textcolor{skyblue}{ω*ω},ω*ω+1,...&<&\textcolor{skyblue}{ω^n},... \end{array}

 

果てなく定義できちゃいます。

 

\begin{array}{llllllllllllll} \displaystyle ...ω^n,...\textcolor{skyblue}{ω^ω},...&<&\textcolor{skyblue}{ω^{ω^ω}},...&<&\textcolor{skyblue}{ω^{ω^{ω...}}},...&<&\textcolor{skyblue}{ω_1},...,\textcolor{skyblue}{ω_n},...&<&\textcolor{skyblue}{ω_ω},... \end{array}

 

以上、無限順序数はこんな感じですね。

 

 

人間の「大雑把な大きさの比較」とか

そういうのでこの感覚はよく使われてたりします。

 

 

 


 


順序数の厳密な定義

 

『順序数』の持つ性質を観察してみると

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Trans}(α,β)&≡&(α∈β∈S_{\mathrm{Ordinal}})⇒(α∈S_{\mathrm{Ordinal}}) \\ \\ \mathrm{Trichot}(α,β)&≡&(α∈β)∨(α=β)∨(β∈α) \end{array}

 

『推移律』と『三分律』を満たすことは明らか。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&<&1&<&2 \\ \\ n&& &∈&n+k \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 1&>&0 \\ \\ 1&<&2 \\ \\ 1&=&1 \end{array}

 

つまり「集合」で『順序数』を表現したいなら

この性質を満たすように定義しなければなりません。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle S_{n+1}&=&2^{S_n} \end{array}

 

ここで出てくるのが『整列集合』で

『順序数』はこれを基礎にして作られます。

 

 

 

 

 

関係 < の定義

 

大小比較を行う関係 <

集合論の文脈で定義することができます。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle α∈β&≡&α<β \end{array}

 

具体的にはこんな感じに。

 

 

本来であれば

「帰属関係 」は『推移律』を満たすとは限りません。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ∅&∈&\{∅\}&∈&\Bigl\{ \{∅\} \Bigr\} &&〇 \\ \\ ∅&&&∈&\Bigl\{ \{∅\} \Bigr\}&&× \end{array}

 

しかし『集合が推移律を満たす』場合

「帰属関係 」と「 < 」は同様の振る舞いをします。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle S_{n+1}&=&2^{S_n} \\ \\ S_{n+1}&=&S_n∪\{S_{n}\} \end{array}

 

これでなんとなく分かると思うんですが

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle n&:=&S_n \\ \\ k&>&1 \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle n&∈&n+1&∈&n+k \\ \\ n&&&∈&n+k \\ \\ \\ n&<&n+1&<&n+k \\ \\ n&&&<&n+k \end{array}

 

「大小関係」を厳密に定義する場合

あらゆる記号は集合論的に解釈できることから

このようにすると良い感じになるわけで。

 

 

つまるところ

「推移律を満たす関係 」は

「大小比較を表す記号 < 」の定義だとみなすことができます。

 

 

 

 

 

まとめ

 

「順序数」は『推移律』と「三分律」を満たす集合

つまり「 S_{\mathrm{Ordinal}} が順序数」なら

形式的な定義は ↓ になります。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀α,β∈S_{\mathrm{Ordinal}}&\Bigl[\,\mathrm{Trans}(α,β)∧\mathrm{Trichot}(α,β)\,\Bigr] \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Trans}(α,β)&≡&(α∈β∈S_{\mathrm{Ordinal}})⇒(α∈S_{\mathrm{Ordinal}}) \\ \\ \mathrm{Trichot}(α,β)&≡&(α∈β)∨(α=β)∨(β∈α) \end{array}

 

「三分律 \mathrm{law \,\, of \,\, Trichotomy} 」については

ここが整列集合上なので簡略化します。

一般形は書かれ方がえぐいので。

 

 

 


 


順序数の帰納的定義

 

順序数の本質は

『推移律』と『三分律』です。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle α∈β∈γ&⇒&α∈γ \end{array}

\begin{array}{llllll} \displaystyle α∈β&∨&α=β&∨&β∈α \end{array}

 

これを満たす「整列集合 (S,≤) 」は定義に都合が良く

そのため『順序数』はこれによって定義されることになります。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&=&∅ \\ \\ \mathrm{ord}(S_α,≤)&=&α \\ \\ \mathrm{Suc}(α)&=&2^α \end{array}

 

こんな具合に。

 

 

 

 

 

初期値

 

出発点を 0 として

その記号に「空集合 」を割り当てます。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{ord}(∅,≤)&:=&∅ \\ \\ &=&0 \end{array}

 

スタンダードなやり方ですね。

 

 

 

 

 

記号の定義

 

『順序数』は「 α 」で表すとします。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{ord}(S_α,≤)&=&α \end{array}

 

これは後者関数で厳密に定義されるので

中身はこの時点じゃよく分かりません。

 

 

 

 

 

後者規則

 

「後者 \mathrm{Suc}(α) 」は次のように定義します。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Suc}(α)&:=&α∪\{α\} \end{array}

 

これは「順序数の中身」の話ですね。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&:=&∅ \\ \\ 1&:=&0∪\{0\}&=&\{∅, \{∅ \} \} \\ \\ 2&:=&1∪\{1\}&=&\Bigl\{ ∅, \{∅ \},\{ ∅, \{∅ \} \} \Bigr\} \\ \\ &&\vdots \end{array}

 

この「後者関数」を採用する場合

順序数の具体例はこのように書かれます。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Suc}(α)&:=&2^α \end{array}

 

念のため言っておくと

後者関数はこれを採用してもOKです。

というか、こっちの方が良いかもしれません。

 

 


 


順序数の種類

 

「順序数」は大きく分けて 3 つに分類できます。

内訳は『初期値』『後者規則』『特例』

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&:=&∅ \\ \\ \mathrm{Suc}(α)&:=&2^α \\ \\ ω&:=&\displaystyle\bigcup_{α<ω}α &(|N|≤ω) \end{array}

 

最小の『要素』である『 0

次を定義できる『後続順序数』

↑ 二つじゃない『極限順序数』

 

 

上2つは帰納的定義の焼き回しですね。

これにそれぞれ名前がついてるって話を ↓ でやる感じです。

 

 


 

 

後続順序数 Successor Ordinal

 

これは『後者規則』のことです。

なんか(任意の)「順序数 α 」があるとき

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle α&<&\mathrm{Suc}(α) \end{array}

 

その「次(後ろ)にくる一番小さな順序数」

これを『後続順序数』と呼ぶことがあります。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Suc}(α)&:=&α∪\{α\} \\ \\ \mathrm{Suc}(α)&:=&2^α \end{array}

 

具体的には

こういう \mathrm{Suc}(α) が「後続順序数」ですね。

 

 


 

 

極限順序数 Limit Ordinal

 

『初期値 0 』でも『後続順序数』でもない

でも「順序数」であるものをこう呼ぶことがあります。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω&:=&\displaystyle\bigcup_{α<ω}α &(|N|≤ω) \end{array}

 

まあ要は「無限」の話で

「加算無限 ω_0 」以上のやつを表現する時必要に。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω_0+1&:=&2^{ω_0} \end{array}

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω_0+ω_0&=&2^{2^{2^{\cdots}}} \\ \\ &=&\displaystyle\bigcup_{α<ω_0}(ω_0+α) \end{array}

 

具体的にはこんな感じですね。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω_0&=&\{0,1,2,3,4,5,6,...\} \\ \\ ω_0+ω_0&=&\{0,1,2,3,4,...,n,...,ω_0,ω_0+1,ω_0+2,...\} \end{array}

 

『自然数全体の集合 ω_0 』として

それ以上のものをこんな風に定義します。

 

\begin{array}{llllll} \displaystyle ω_0&<&2^{ω_0} \end{array}

 

こうすると「カントールの定理」から必ずこうなるので

「無限」でも『大小関係 < 』が使える

とまあそんな感じです。

 

 

 

 

 

以上、順序数の基本的なことはこれでおしまい。

これがとても重要だってことが伝わったなら

自分としてはとても嬉しいです。