|| 推論の中でも特に正しいやつ
『演繹的推論』を『形式化したもの』
スポンサーリンク
目次
推論「~だからこうでは?という感覚を言語化したもの」
論理的推論「前提から結論を導ける可能性がある推論」
形式的誤謬「必然的に前提から結論を導けない推論」
推論述語「推論の中身を分類するための本質」
論理的推論「正しくなることがあるから正しそうに見える推論」
演繹「最小のブロックを積み上げるような形の推論」
帰納「一部分からその全体像を得るような形の推論」
仮説形成「結果から原因を仮定する推論」
演繹的推論「正しい → 正しいとなる演繹の型」
前件肯定「正しいなら正しいとする演繹の型」
後件否定「違うなら違うとする演繹の型」
三段論法「ちょっと遠回しな演繹の型」
普遍汎化「一般化を意味する演繹の型(全称化)」
存在汎化「存在するを導く演繹の型(存在量化)」
推論規則「演繹的推論を形式化したもの」
Modus Ponens「最初の基礎的な推論規則」
全称化「普遍汎化から公理化された後に推論規則へ」
LKの推論規則「推論規則を推件式で構文レベルに」
誤謬「推論の中でも正しいとは言えないもの」
形式的誤謬「正しくなる可能性が無い推論」
非形式的誤謬「演繹的ではない推論」
推論 Pre-Logical Inference
|| 理由があってそこから結論を得る感じ
「~だから」「~だよね」の感覚を言語化したもの
\begin{array}{ccc} 推論 &:& 根拠 &\to& 結論 \\ \\ 推論 &:& 前提 &\to& 結論 \\ \\ 推論 &:& 原因 &\to& 結果 \end{array}
これが「推論」のざっくりとした型で
(真か偽になってほしいという役割的な要請がある)
\begin{array}{ccc} 推論 &\left\{ \begin{array}{lcl} 前提から結論を導ける可能性がある推論 \\ \\ 必然的に前提から結論を導けない推論 \end{array} \right. \end{array}
その中身を大きく分類するとこんな感じになります。
(推論の役割的に識別不可能な中間層は除外される)
推論述語 Inference Predicates
|| 推論の中身を分類する判定基準
「~な推論か?」に対して「真か偽を返す述語」のこと
\begin{array}{ccl} 主観判定 &\to& 主観真理判定 \\ \\ \\ 直感 &\to& 直感的に真偽が分かる \\ \\ 直感 &\to& 直感的に真偽の判定が可能 \\ \\ 直感 &\to& 真偽は直感判定可能 \end{array}
根本的には「メタレベル(直感的意味)の述語」から始まり
(ここはまだモデルが無い真偽が確定するか曖昧な領域)
\begin{array}{lcl} 主観真理判定 &\to& 主観妥当性判定 \\ \\ \\ 真偽は直感判定可能 &\to& 真→真かは直感判定可能 \\ \\ 真偽は直感判定可能 &\to& 真確定保存は直感判定可能 \end{array}
そこから分かる「妥当性判定の原型」から
\begin{array}{ccc} 直感的に妥当 &\Longleftrightarrow&真確定保存は直感判定可能 \end{array}
「直感的な意味での妥当性」が定義されます。
(確定的な「妥当である」はモデルの段階)
形式的誤謬判定の核
ここからが古い理論では曖昧になっている部分で
「誤謬」を正確に分類できない原因になっているんですが
\begin{array}{lcl} 直感的に演繹的 &\Longleftrightarrow& 直感的に妥当 \\ \\ 構文的に演繹的 &\Longleftrightarrow& 確定的に妥当な型 \end{array}
『演繹的である(演繹っぽい)』という概念を挟めば
(演繹の型かどうかは分かるがまだ演繹であるとは言えない)
\begin{array}{lcl} 推論規則である &\Longleftrightarrow& 構文的に演繹的である \\ \\ 非形式的誤謬である &\Longleftrightarrow& 構文的に演繹的ではない \end{array}
「形式的誤謬」と「非形式的誤謬」を
自然な形で「構文的に分離する」ことができます。
(「確定的に妥当」の詳細については後述)
従来理論との接続
↑ がただの自然な拡張でしかないというのは
\begin{array}{rcl} 妥当である &\Longleftrightarrow& 真理値確認で問題無し \\ \\ 確定的に妥当である &\Longleftrightarrow& 真理値確認で問題無し \end{array}
ただの現象への名付けと整理であることから
(暗黙の前提をきちんと言語化しているだけ)
\begin{array}{ccc} 妥当な推論規則 &\Longleftrightarrow& 真理値確認で問題無い推論規則 \end{array}
直感的に理解できると思われます。
補足しておくと
実際の流れがそうであるように
\begin{array}{lcl} 直感的に妥当 & \overset{妥当じゃないなら排除}{\longrightarrow} & 直感的に演繹的 \\ \\ 直感的に演繹的 &\overset{モデルで真偽判定可能}{\longrightarrow}& 確定的妥当性評価 \\ \\ 確定的に妥当 &\overset{妥当じゃないなら排除}{\longrightarrow} &構文的に演繹的 \end{array}
「演繹的である(真保存の型である)」は
このような形で「構文レベルの定義」を得ます。
(直感意味 → 確定意味 → 構文規則 → 構文確認が可能)
形式的誤謬の厳密な定義
これについても
\begin{array}{ccc} 妥当な推論規則 & \overset{矛盾を導く可能性排除}{\longrightarrow} & 演繹 \end{array}
「妥当な推論規則」の中にある
\begin{array}{lcl} 演繹 &\Longleftrightarrow& 矛盾を導かない妥当な推論規則 \\ \\ 形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 矛盾を導く妥当な推論規則 \end{array}
「矛盾を導いてしまったもの」に名前を付けただけで
(推論規則に問題は無いが前提に問題があるパターン)
\begin{array}{ccl} 演繹 &\Longleftrightarrow& 真を正しく導く \\ \\ 演繹 &\Longleftrightarrow& 導出無矛盾で妥当な推論規則 \end{array}
既存概念の変更は一切ありません。
(演繹の条件として無矛盾性は暗黙の前提)
論理的推論 Logical Inference
|| 前提から結論を導ける可能性がある推論
「前提から結論を導けることがある推論」のこと
\begin{array}{ccc} φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ && 演繹 &&\mathrm{True} \\ \\ \displaystyle \bigwedge_{i=1}^{n} φ(a_i) &\vdash& \forall x \,\, φ(x) && 帰納 &&\mathrm{Unknown} \\ \\ (φ→ψ)∧ψ&\vdash& φ &&仮説形成 &&\mathrm{Unknown} \end{array}
代表的なのは以上の3つです。
(下2つは多くの誤解の要因になっている)
補足しておくと
主に「定理である」の判定で使われる
\begin{array}{ccccccl} A &→& B &&\Longleftrightarrow && AならばBになる \\ \\ A &\vdash & B &&\Longleftrightarrow && AからBが導かれる \end{array}
この「記号 \vdash 」の意味はこんな感じです。
(この記事では構文レベルと意味レベルで意味を統一)
記号 \vdash の変遷
これの意味はちょっと複雑で
\begin{array}{ccc} 1900年代 &\mathrm{Hilbert}\text{-}\mathrm{style}& & 証明できる \\ \\ 1934年代 &\mathrm{Gentzen}&& 推件式 \end{array}
現代とそれ以前で意味がだいぶ変化しています。
(記号の誕生は「証明可能性」という概念の形式化段階)
\begin{array}{lclcl} 誕生前 && Γ\vdash φ &\Longleftrightarrow& 前提\to 結論 \\ \\ 誕生前 && Γ\vdash φ &\Longleftrightarrow& 前件\to 後件 \\ \\ \\ 証明可能性 && Γ\vdash φ &\Longleftrightarrow&Γからφが導かれる \\ \\ 推件式 && Γ\vdash φ &\Longleftrightarrow& 構文レベルの概念 \end{array}
なので「どの時代の感覚の話か」を考える場合
この記号の意味はだいぶややこしいことになります。
(前件と後件は前提結論定理より後に登場した古い概念)
構文レベルでの論理的推論
↑ では「可能性がある」を外していますが
\begin{array}{lcl} \Diamond A &\Longleftrightarrow& Aが正しい可能性がある \\ \\ \Diamond A &\Longleftrightarrow& Aが真である可能性がある \end{array}
「構文レベル(真偽不明)」の段階では
「可能性記号 \Diamond 」を用いて
\begin{array}{lcc} 演繹 && \Diamond &\Bigl(& φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ &\Bigr) \\ \\ 帰納 && \Diamond &\Bigl(& \displaystyle \bigwedge_{i=1}^{n} φ(a_i) &\vdash& \forall x \,\, φ(x) &\Bigr) \\ \\ 仮説形成 && \Diamond &\Bigl(& (φ→ψ)∧ψ&\vdash& φ &\Bigr) \end{array}
これらはこのように記述するのが正確です。
(意味レベルで \vdash が継続的に使えるなら妥当)
演繹 Deduction
|| 正しいものから出発する推論の基本形
「前提から結論を得る」基本的な推論
\begin{array}{ccc} φが真 &で& φならψが真 &&であるなら && ψは真 \\ \\ φは真 &かつ& φ→ψも真 && ならば && ψは真 \\ \\ φ &∧& φ\to ψ && \vdash && ψ \end{array}
「 φ が真」と「 φ\to ψ が真」という前提から
「 ψ が真になる」という結論が得られる推論の型
(形式的には公理系+推論規則で定義される)
帰納 Induction
|| いくつかそう → 全部そう
「いくつかの事例」から『全部そうだ』とする推論
\begin{array}{ccc} いくつかのa_iがφになる &から& 全部φになる \\ \\ \\ φ(a_1)∧\cdots ∧ φ(a_n) &\vdash & \forall x \,\, φ(x) \\ \\ \displaystyle \bigwedge_{i=1}^{n} φ(a_i) &\vdash& \forall x \,\, φ(x) \end{array}
『真になり得る』段階ではこのように表現できますが
(可能性記号を使うなら気にしなくて良い話)
\begin{array}{lclcl} 論理的推論 && \displaystyle \bigwedge_{i=1}^{n} φ(a_i) &\vdash& \forall x \,\, φ(x) \\ \\ 妥当ではない && \displaystyle \bigwedge_{i=1}^{n} φ(a_i) & \overset{真になることがある}{\longrightarrow} & \forall x \,\, φ(x) \end{array}
「確実に真になるかを問われる」段階では
「意味が付与された \vdash 」は使えません。
(モデル内かそうでないかがこの判定の境になる)
補足しておくと
\begin{array}{lcl} 自分にできた &→& 全員できる \\ \\ やべえ男がいた &\to& 男は全員やばい \\ \\ 怖い女がいた &\to& 女は全員怖い \end{array}
こういうのが「帰納」と呼ばれる推論の具体例です。
(真になることがあるせいで誤解の元になる)
仮説形成 Abduction
|| 結果から原因を推測する時の推論
「~であるかも」とするなら正しくなるやつ
\begin{array}{ccc} φが起きるとψが & & ψが起きた && なら && 原因はφ \\ \\ (φ→ψ)&∧&ψ &&\vdash && φ \end{array}
「演繹」とは形が真逆で
\begin{array}{lcl} Aは早起き &\to& Aは朝早く起きてる \\ \\ Aは寝てない &\to& Aは朝早く起きてる \\ \\ Aは朝が好き &\to& Aは朝早く起きてる \end{array}
普通なら確定できないはずの
「前提が確定で導出できる」と言っています。
(結果に至る原因のほとんどは断定が難しい)
補足しておくと
\begin{array}{lcl} \left( \begin{array}{r} Aが犯罪者 だとすると Aは怖い \\ \\ Aは怖い \end{array} \right) &⊢& Aは犯罪者かも \end{array}
具体的にはこんな感じの推論が仮説形成です。
(予想でしかないが当たっている場合もある)
演繹的推論 Deductive Pattern
|| 論理的推論における演繹の型
「推論規則の原型」となる演繹の型
\begin{array}{cccllll} φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ &&\mathrm{Modus \,\, Ponens} \\ \\ (φ→ψ)∧¬ψ&\vdash& ¬φ &&\mathrm{Modus \,\, Tollens} \\ \\ \\ (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x \, φ &&\mathrm{Universal \,\, Generalization} \\ \\ φ(a)&\vdash& ∃x \, φ &&\mathrm{Existential \,\, Generalization} \end{array}
以上の直感的な推論の型4つと
\begin{array}{cccll} (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash& φ→ω &&\mathrm{Hypothetical} \\ \\ (φ∨ψ)∧¬φ&\vdash& ψ &&\mathrm{Disjunctive} \end{array}
「仮言三段論法 \mathrm{Hypothetical \,\, Syllogism} 」
「選言三段論法 \mathrm{Disjunctive \,\, Syllogism} 」が
\begin{array}{ll} 演繹的推論 & \left\{ \begin{array}{lcl} 前件肯定 & &\mathrm{MP} \\ \\ 後件否定 && \mathrm{MT} \\ \\ 普遍汎化 && \mathrm{UG} \\ \\ 存在汎化 &&\mathrm{EG} \\ \\ 三段論法 && \mathrm{Syll} \end{array} \right. \end{array}
「演繹的推論」における「基本的な型」になります。
(これらの自然言語表現と形式表現の両方が演繹的推論)
単純な記号操作と論理結合子
「基本操作」の中に含めて良いものとして
\begin{array}{ccccr} φ,ψ&\vdash& φ∧ψ &&\mathrm{Conjunction \,\, Introduction} \\ \\ φ&\vdash& φ∨ψ &&\mathrm{Disjunction \,\, Introduction} \end{array}
こういったものも
『記号操作的な意味』で「基本操作」だと言えます。
(実はこの基礎的に見える操作も \mathrm{MP} で導出できる)
前件肯定 \mathrm{Modus \,\, Ponens}
このパターンは既に ↑ で紹介した
\begin{array}{ccc} φが真 &と& φならψが真 &から & ψは真が導かれる \\ \\ φ &∧& φ\to ψ & \vdash & ψ \end{array}
「演繹的推論」の「基礎の1つ」です。
( Modus Ponens の感覚を日本語で表現したのがこれ)
後件否定 \mathrm{Modus \,\, Tollens}
これは「前件肯定」と本質的に同じもので
\begin{array}{ccc} φならψが真 & で & ψが偽 &であれば& φは真じゃない \\ \\ (φ→ψ)&∧&¬ψ &\vdash& ¬φ \end{array}
「間接証明」なんて呼ばれることもあります。
(「結論が偽なら前提は真にならない」の記号表現)
三段論法 \mathrm{Syllogism}
三段論法は実は2種類あって
どちらもわりと使うものだったりします。
\begin{array}{ccccl} (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash&φ→ω \\ \\ (φ∨ψ)∧¬ψ &\vdash&φ \end{array}
上は「仮言三段論法 \mathrm{Hypothetical \,\,Syllogism} 」(有名な方)
下は「選言三段論法 \mathrm{Disjunctive \,\, Syllogism} 」と言います。
補足しておくと
\begin{array}{ccc} どっちか真 &で& ψが偽 &なら& φが真 \\ \\ (φ∨ψ)&∧&¬ψ &\vdash&φ \end{array}
「選言三段論法」というのは
要するに「消去法」のことを指していて
\begin{array}{lclc} φならψ &で& ψならω &ということは& φならω \\ \\ (φ→ψ)&∧&(ψ→ω)&\vdash&φ→ω \end{array}
『情報の省略(要約)』で使われる「仮言三段論法」と同様
どちらも明確な役割を持っています。
汎化 \mathrm{Generalization}
述語記号を採用するためのルール
\begin{array}{ccc} φ(x)が無条件で真 &なら& どんなxでもφ(x)は真 \\ \\ (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x\,\, φ(x) \\ \\ \\ φ(a)が真 &なら& φ(x)を満たすxは存在する \\ \\ φ(a) &\vdash& ∃x \,\,φ(x) \end{array}
「量化子」を使う場合の演繹操作の話です。
(特に上の方は \mathrm{GEN} と省略されることが多い)
\begin{array}{cccccl} 普遍汎化 && (\vdash φ(x)) &\vdash & ∀x\,\, φ(x) &\mathrm{Universal} \,\, \mathrm{Gen} \\ \\ 存在汎化 && φ(a) & \vdash & ∃x \,\, φ(x) & \mathrm{Existential} \,\, \mathrm{Gen} \end{array}
それぞれの自然言語名はこんな感じ。
(一般化と呼ばれる操作は普遍汎化のこと)
推論規則 Inference Rules
|| 形式化された演繹的推論のこと
「形式的に整理された」形の「演繹的推論」
\begin{array}{lccc} \mathrm{Modus \,\, Ponens} && φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ \\ \\ \mathrm{Modus \,\, Tollens} && (φ→ψ)∧¬ψ&\vdash& ¬φ \\ \\ \\ \mathrm{Universal \,\, Gen} && (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x \,\, φ \\ \\ \mathrm{Existential \,\, Gen} && φ(a)&\vdash& ∃x \,\, φ \\ \\ \\ \mathrm{Hypothetical \,\,Syll} && (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash&φ→ω \\ \\ \mathrm{Disjunctive \,\, Syll} && (φ∨ψ)∧¬ψ &\vdash&φ \end{array}
「演繹的推論」の『記号表現』のことで
(演繹的推論から直感的意味を外した概念)
\begin{array}{lccc} \mathrm{Modus \,\, Ponens} && φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ \\ \\ \mathrm{Universal \,\, Gen} && (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x \,\, φ \end{array}
これらを「全て表現できる最低限のルール」として
「 \mathrm{MP} 」と「 \mathrm{UG} 」の2つが基礎に置かれています。
(推件式が登場する前の段階では \mathrm{MP} のみが基礎)
推論の規則という概念の変遷
字面から意味が読み取れるように
『推論の規則』という概念自体は普遍的なものです。
\begin{array}{lclcl} 形式化前 && 感覚的な推論の型 &意味+言語 \\ \\ 形式化後 && 統一的に表現可能 & 意味+記号 \\ \\ 推件式登場後 && 記号操作のみ & 記号 \end{array}
「形式化された演繹的推論」の意味が強くなったのは
「ヒルベルト」によって数学全体が形式化されたからで
\begin{array}{ccc} 形式化前の推論規則 &\to& 形式化後の推論規則 \\ \\ 感覚的意味が強い &\to& 形式的意味が強い \end{array}
それ以前にも「感覚的な意味」は存在していました。
(現代では感覚的な意味が非常に薄い)
Modus Ponens
|| 演繹的推論における基礎
「推論規則」における中心と言えるもの
\begin{array}{c} ラテン語表現 && \mathrm{Modus} & \mathrm{Ponendo} & \mathrm{Ponens} \\ \\ 日本語訳 &&方式 & 肯定によって & 肯定する & 形の \end{array}
ラテン語由来の「演繹」の基礎的表現で
\begin{array}{lcc} 英語順序 & \mathrm{Modus} & & \mathrm{Ponens} & \mathrm{Ponendo} \\ \\ 直接的英語訳 & \mathrm{a} \,\, \mathrm{mode} & \mathrm{which} & \mathrm{affirms} & \mathrm{by \,\, affirming} \\ \\ 慣例的英語訳 & \mathrm{the} \,\, \mathrm{mode} & \mathrm{which} & \mathrm{affirms} & \mathrm{by \,\, affirming} \end{array}
この単語自体は「前件肯定」よりも後に登場しています。
(前件肯定の感覚を形式化したものが \mathrm{MP} )
全称化 Universal Gen
|| 全っていう数的表現を使いたい時のルール
「全て~である」を得るための推論規則
\begin{array}{lclcl} \mathrm{Hilbert} の時点 &推件式登場前& 扱いは論理公理 \\ \\ \mathrm{Gentzen} の時点 &推件式登場後& 推論規則になった \end{array}
時代によっては「公理」と呼ばれたこともありますが
現代では「推論規則の基礎の1つ」として扱われます。
(記号と意味を完全に分離できるという事実がでかい)
LKの推論規則 Logischer Kalkül
|| 推件式で推論規則を整理したもの
「論理計算 Logischer Kalkül(ドイツ語)」が LK の由来
\begin{array}{ccc} \vdash & \left\{ \begin{array}{lcl} 証明可能 &\to& 意味と記号の境界が曖昧 \\ \\ 推件式 &\to& 意味と記号が分離 \end{array} \right. \end{array}
これについて深く理解するには
「シークエント」の知識が必要になります。
(このシークエントというのが推件式の英語名)
誤謬 Fallacy
|| ほぼ全ての推論の型
「確実に正しくならない推論」と
「演繹的である」を満たさない「論理的推論」のこと
\begin{array}{ccc} 論理的推論 &\left\{ \begin{array}{lcl} 妥当である &\to& 演繹 \\ \\ 妥当ではない &\to& 非形式的誤謬 \end{array} \right. \end{array}
「形式的な意味」の「論理的推論である」は
「演繹的」に限定されることになりますが
\begin{array}{ccc} 論理的である & \left\{ \begin{array}{lcc} 納得できる \\ \\ 説得力がある \\ \\ 正しいと感じる \end{array} \right. \end{array}
実際的に使われている「論理的である」は
「妥当である」を必ず条件としているわけではないので
\begin{array}{ccc} 誤謬 & \left\{ \begin{array}{l} 妥当ではない論理的推論 \\ \\ 正しくなる可能性が無い推論 \end{array} \right. \end{array}
「誤謬」を含むことになります。
(ほとんどの推論はそもそも誤謬に分類される)
形式的誤謬 Formal Fallacy
|| 絶対に正しくならない誤謬
確実に間違っていると分かる推論
\begin{array}{ccl} 形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 失敗した演繹的推論 \\ \\ 形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 矛盾した演繹的推論 \\ \\ 形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 演繹ではない演繹的推論 \end{array}
これは非常に限定された概念で
(演繹と対になる形でしか存在し得ない)
\begin{array}{ccc} 演繹的推論 & \left\{ \begin{array}{rcl} 無矛盾 &\to& 演繹 \\ \\ 矛盾 &\to& 誤謬 &\to& 形式的誤謬 \end{array} \right. \end{array}
「構文的意味の演繹的推論」から
「矛盾する演繹的推論」という形で現れます。
(選択公理を採用した後の演繹的操作などが代表例)
非形式的誤謬 Logical Fallacy
|| ほぼ全ての誤謬のこと
「演繹的推論ではない推論」のこと
\begin{array}{ccc} よく見る誤謬 & \left\{ \begin{array}{l} 偏ったサンプルによる経験則 \\ \\ 前後をすぐに因果関係とする \\ \\ 相関と因果を区別しない \\ \\ 漏れがある二極化による例外無視 \end{array} \right. \end{array}
「演繹の型に一致しない推論」で
「必ず正しいとは言えない」ものになります。
(正しくなる可能性はあるため誤解の元になる)
誤謬の分類
以上の概念を用いると
\begin{array}{ccc} 誤謬 & \left\{ \begin{array}{lcr} 演繹的ではない推論 &\to& 非形式的誤謬 \\ \\ 非無矛盾妥当推論規則 &\to& 形式的誤謬 \end{array} \right. \end{array}
「誤謬の大分類」はこのようになり
(これに該当しない「推論」が「演繹」になる)
\begin{array}{rcl} 非形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 演繹の型に含まれない \\ \\ 形式的誤謬 &\Longleftrightarrow& 前提に誤りが存在 \end{array}
それぞれこのような述語で説明が可能になります。
(誤謬を統一的に説明できる本質はこの2つ)
具体的には
既存の「原因」や「役割」による分類に対して
\begin{array}{ccc} 原因 & \left\{ \begin{array}{l} 偏ったサンプルによる経験則 \\ \\ 前後をすぐに因果関係とする \\ \\ 相関と因果を区別しない \\ \\ 漏れがある二極化による例外無視 \end{array} \right. \end{array}
「推論述語」で翻訳してみると
\begin{array}{lcl} 仮説形成 &\to& 演繹の型じゃない \\ \\ 帰納 &\to& 演繹の型じゃない \\ \\ 拡大解釈 &\to& 演繹の型じゃない \\ \\ 文脈操作 &\to& 推論じゃない \\ \\ \\ 前提のすり替え &\to& 前提の誤り \\ \\ 因果関係の誤解 &\to& 前提の誤り \\ \\ 偏ったサンプル &\to& 前提の誤り \\ \\ 因果と相関の混同 &\to& 前提の誤り \\ \\ 言葉の意味が曖昧 &\to& 前提の誤り \\ \\ 誤った二分法 &\to& 前提の誤り \end{array}
その本質が見えやすくなるので
\begin{array}{ccc} ストローマン論法 &\Longleftrightarrow& 拡大解釈&→&前提のすり替え \\ \\ 論点のすり替え &\Longleftrightarrow& 文脈操作 &→& 前提のすり替え \end{array}
未知の誤謬に対応しやすくなります。
(既存の分類でも型はなんとなく分かる)
